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2015-05-26 00:00
(連載2)将来は安全保障基本法を
中村 仁
元全国紙記者
岡田氏の「米軍と一緒にいれば、戦闘に巻き込まれるリスクは飛躍的に高まる」と指摘し、首相は「巻き込まれないような地域を選んでいく」と答えました。おかしな押し問答です。海外からみると、「兵士、隊員はリスクをかけて国を守るものなのに、日本は何を考えているのか」という思いでしょう。岡田氏は「自衛隊員に犠牲者がでかねない」という言質を首相からひっぱりだし、安倍政権は危険な安保法制に踏み切るのだという印象を与えたかったのでしょうかね。
首相は「アメリカの戦争には絶対に巻き込まれない」と断言しましたね。国民は「へえー、そんなの。心配はあまりないのだ」と思うでしょう。首相のいう「アメリカの戦争」とは、米国一国のために単独で戦う戦争の意味でしょう。日本が存立危機事態に直面し、アメリカが中心になって武力行使をする戦争に「日本は巻き込まれない」では通りません。日本の重大事態が絡む「アメリカの戦争」と、首相がいった「アメリカの戦争」は別物なのでしょう。国民は「なんだ、そうなんだ」ですよね。安保法制に絡む事態は際限なく存在するし、新兵器の登場、戦争の態様の変化によって、現在ではまったく想定されていないタイプの事態が将来、起こりうるでしょう。その時に手足が縛られかねないルールを事前に作ってしまったり、国会討論などで下手な公約をしてしまったりすると、後悔することになりかねません。
こんなに事細かに国会で、それも防衛の専門家でもない首相、党首たちが延々と、議論を続ける国はあるのでしょうかね。不思議です。党首レベルでしかできない論戦があるはすです。安全保障の専門家の小川和久氏は「日本では総論がなく各論から議論が始まる。戦略なき戦術論をする傾向がある。日本でしか通用しない議論はやめよう」と、指摘しています。「厳しさをます国際環境の中で、日本の平和を守るとは、どういうことなのか」、「新しい安保法制はどのよう形で敵国に対する抑止力になりうるのか」、「侵略戦争と自衛のための戦争はどう違うのか」、「自衛隊の海外活動に歯止めをかけるのは、なんのためなのか」、「情報収集と情報判断力を向上させる仕組みをどう作ればいいのか」などが重要です。さらに「新法制のもとでは、将来、日本の防衛力の増強は不可避なのか。どの程度の防衛費の増加を想定するのか」という問題すぐ浮上します。そうした基本構想こそきちんと議論してもらいたいのです。
関連法案を10本も束ねて、一括改正する煩雑さが新しい安保法制への理解を阻んでいます。将来は安全保障基本法のような整然とした体系の法律に変えるべきでしょう。安倍政権が世論を刺激するのを恐れ、迷路に分け入るような道をなぜ選択したのかよく分りません。現行憲法の制約が強く意識されたのでしょうか。与党案に野党が反対なら、不安定化する国際情勢のもとで、どのような安全保障体制を構築したらよいのかという代替案を示すべきです。安保法制なくして存立できる国などありません。海外で注目しているのは中国でしょう。枝葉の各論ばかりに熱中しないで、高い次元の論議が必要です。「何をするのか、何ができるのか」、「何をさせないのか、何ができないのか」を、大局的に整理してほしいですね。(おわり)
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