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2015-05-27 00:00
(連載2)認識すべき歴史は戦争の歴史のみではない
角田 勝彦
団体役員、元大使
中国は今年を「反ファシスト戦争・抗日戦争勝利70年」と名付け、国連や国際会議を舞台に「邪悪な侵略者」日本をおとしめる「戦勝国外交」を進めてきた。5月23日訪中している自民党の二階俊博総務会長歓迎夕食会でも、習近平国家主席は歴史問題について「侵略の罪を隠すことは許されない。歴史を歪曲、美化しようとするいかなる言動も中国人民とアジアの被害国の国民は決して許さない」とけん制した。NPT再検討会議の最終文書案に、日本が求めていた広島、長崎の被爆地訪問を呼びかける文言を盛り込むのに反対し、大修正させたのはもう一つの例である。9月3日には盛大な式典開催を計画している。韓国も従軍慰安婦問題を中心にこの対日批判に同調してきた。 しかしながら、幸い日本を含む旧枢軸側の贖罪を受け入れ和解し未来に向かおうとする考え方の方が、世界では一般的になっている。安倍総理の米議会演説はこれに貢献した。
他方、あくまで第2次大戦の歴史に拘泥する諸国には、いろいろな問題も生じている。5月9日、ロシアが開催した対ドイツ戦勝70年の記念式典には日米欧の主要国首脳がこぞって欠席し、ロシアの国際的孤立を際立たせた。ウクライナ危機で、戦後世界秩序を乱したと批判されているためである。中国は参列したが、9月3日開催予定の自国の同種式典へのプーチン出席を確保する意味もあった(9月式典は共同開催になった)。その中国も、米国との関係の冷却化、とくに南シナ海で岩礁埋め立てなど領有権主張を強める動きへの米国の懸念と決意表明に直面している。バイデン米副大統領は、5月22日、「公平で平和的な紛争解決と航行の自由のため、米国はたじろぐことなく立ち上がる」と強調した。習近平国家主席の9月公式訪米を前に中国の動きが注目される。
ただし、ロシア、中国のこれらの動きは「戦後世界秩序」を揺るがすには至っていない。安保関連法案審議で政府が日本を取り巻く安全保障環境の悪化を強調しすぎるのは誤解を招こう。たしかに安倍総理が指摘したように「北朝鮮が進める核・ミサイル開発や、領空侵犯に備えたスクランブル(緊急発進)の増加」はあるが、戦後70年の歴史を振り返ると、今よりも力による秩序崩壊を危惧される時期が多く見受けられる。例えば朝鮮動乱がある。北朝鮮の韓国侵入に端を発し米(国連軍)・中両国が戦ったのである。共産主義というイデオロギーを奉じ自由民主主義の米欧と世界の覇を争っていたソ連も健在だった。現在ソ連は崩壊し、ロシアはプーチンの下、栄光の回復を求めているが共産主義は放棄している。共産主義を奉じる中国にしても、平和こそ繁栄と政権の安定を保証するものであることを十分認識している。米国との連携を求めている。
安倍総理の戦後70年談話は、この現在の世界秩序を正しく認識し、「戦後レジームからの脱却」でなく、同盟よりも国際協調主義にもとづく世界秩序の尊重と護持を誓うとともに、唯一の被爆国日本として「核なき世界」実現への努力を約束するものであるべきだろう。先の大戦の反省については、5月4日、多くの欧米の日本研究者らが安倍総理に対し、戦後70年の今年を過去の植民地支配や侵略の過ちを認める機会にするよう求める声明を送付したことも考慮し、近隣諸国との和解可能な従来の用語を踏襲することが賢明だろう。(おわり)
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