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2015-08-17 00:00
戦後70年の8月に思う
四方 立夫
エコノミスト
毎年8月になると戦争の悲惨さ、原爆の残酷さが語られ、「二度と戦争を起こさない」との誓いが繰り返されているが、戦争は誓いだけで回避されるものではなく、それに向けた具体的な行動があってこそ回避できるものである。日本は戦後70年間平和を享受してきたが、2012年に習近平体制が成立して以来の中国は、鄧小平の唱えた「韜光養晦」を捨てて、A2AD(Anti-Access Area Denial)戦略により東シナ海及び南シナ海への海洋進出を進めており、もはや日本も従来の政策を堅持するだけでは、その安全を確保することが困難になってきている。
日本人の中には東京裁判でA級戦犯が処刑されたことにより戦争責任の問題に決着が着いたと思っている者がいるが、事前のシミュレーションで敗戦が必至との結果が出ていたにも関わらず、誰が、何時、どのようにして戦争突入を決断したのか、どうすれば戦争を回避できたのか、に関する十分な総括はできておらず、戦争責任者の処罰も行われていない。ドイツではつい最近になって90歳過ぎの元ナチス親衛隊員の裁判が行われたが、責任者の追及は徹底して行われるべきである。
日本には昔から聖徳太子の唱えた「和をもって貴しとなす」との美風があるが、これが大問題が起きた時には逆に責任の追及を行わない、との悪弊につながることがあり、現代の社会においても組織で大きな問題が発生した場合は組織維持が最優先されることが間々ある。
敗戦のような日本史上最大の問題に直面した時こそ、その原因究明、責任者の処罰、そして再発防止策を徹底して行うことが必須であり、戦後70年の節目の年にあたり、日本人自らが過去の戦争に真摯に向き合わなければならない。その上で直面する中国並びに北朝鮮の脅威にどう対応していくか、を過去の政策の延長の上ではなく、今日の現実に立脚して考察し、有効な手段を講じることが不可欠である。キッシンジャーによれば「アジアのBalance of Power にはPartnershipが必要」とのことであるが、眼前の脅威に対抗するには軍事のみならず、外交、経済、技術、などの総合力、即ちSmart Powerの強化が喫緊の課題である。終戦を振り返るに当たり、過去を冷静に分析し、学習すると共に、現実を冷徹に見つめ直して、国の総合安全保障を考える時としたい。
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