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2007-02-16 00:00
拉致問題の「解決」とは何か
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
北京の6カ国協議で合意が成立し、朝鮮半島非核化に向けてのロードマップが出来上がった。非核化のプロセスで、5カ国側は総量100万トンの重油を北朝鮮に提供することになったが、日本政府は「拉致問題の解決なくして支援せず」の方針を打ち出し、各国もこれを理解しているという。しかし韓国の千英宇・外交通商次官補は「均等分担の原則に異議を唱えた国はなかった」と強調、「非核化で最大の恩恵を受けるのは日本ではないか」と不満を表明した。
初期段階の合意では、寧辺の核施設の停止と封印の見返りとして5万トンの重油が提供されることになっているが、これは全量を韓国が負担するという。問題はそのあとだ。麻生外相は「6カ国合意の枠組みには日本も参加するが、拉致問題が解決しない限り、支援はしない。しかし北朝鮮のエネルギー事情の調査などには参加する」と語っている。「エネルギー事情の調査」とは何ごとか。そんなものを北朝鮮が受け入れ、協力するとでも思っているのだろうか。日本の政治家もメディアも「拉致問題の解決」を念仏のように唱えている。安倍首相によれば、「解決」とは拉致被害者の全員救出であり、生還だという。北朝鮮は、2002年9月の小泉訪朝の際「5人生存、8人死亡」と発表した。5人とその家族は帰国したが、「8人死亡」はその後も一貫している。
問題は、死亡の証拠としての遺骨が存在しないことだ。横田めぐみさんの「遺骨」は日本政府がニセモノと断定した。死亡の日時や場所にも疑惑が残る。その後の脱北者の目撃情報などが北朝鮮当局の発表の信憑性を失わせた。それらが「被害者全員が生存しているという前提で原状回復を要求する」という安倍首相の立場の根拠となっている。
私自身、これまで7回訪朝し、その都度、拉致問題の真相究明に個人的に努力しているが、北朝鮮側の説明によれば、「8人死亡は事実だ。横田めぐみさんの遺骨はホンモノだ。他の遺骨は当該機関が処分してしまって残っていない。そのことは、小泉首相以下日本政府関係者はみな知っている」とのことだった。とすれば、日本政府が国民をだましていることになる。拉致被害者家族の背後には、金正日体制打倒を標榜し、日朝国交正常化に反対する勢力が存在する。ブッシュ政権が朝鮮半島の現実を直視し、金正日政権と「取り引き」する方向に政策転換した現在、安倍首相はこのような欺瞞をいつまで通そうとするつもりなのか。改めてその真意を問いたい。
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