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2015-09-24 00:00
「新安保」は世界秩序の構造的変化への布石
鍋嶋 敬三
評論家
米国のオバマ政権が中東(シリア、イラン)や東欧(ロシア)対策で手一杯、外交戦略の最優先課題としてきたアジア・リバランス(再均衡)に注力する余力がなくなってきた今こそ、9月19日成立した安全保障関連法が目指す日米同盟の強化・抑止力の向上、アジア太平洋地域を中心とする国際的な平和と安定への日本のより充実した貢献が大きな意味を持つ。新安保法制は進行する世界秩序の構造的変化に対応して、日本の国際的役割と発言力を拡大する重要な布石である。インドの国際政治学者が「日本は歴史的な曲がり角に立った」と述べたのは、このような文脈においてである。
安保関連法案の国会審議がヤマ場を迎えたころ、中国が南シナ海で領有権を主張するスプラトリー(南沙)諸島で人工島に3ヶ所目の3000メートル級滑走路を建設した衛星写真が公表された。中国の対(米)潜哨戒能力の向上によって、対米攻撃が可能な核弾道ミサイル潜水艦を防護する能力が飛躍的に高まる。米国は国際法上の主権を認めていない人工島の(領海に相当する)12カイリ以内の艦船の航行や哨戒飛行を検討しながら、2012年以降実施していないことが明らかになった。オバマ政権第1期の国家安全保障会議(NSC)で大統領特別補佐官を務めたJ.ベーダー氏は9月25日の米中首脳会談を前に、オバマ大統領は「米中関係が中東と東欧に次ぐ第3の緊張の戦線になることを望んでいない」との見方を披露した。
米国の対応ぶりは、中国が軍事力を背景に「強気で押せば利がある」と、付け入る隙を与えるようなものだ。中国はロシアと8月下旬に日本海で共同上陸演習(どこへ上陸を想定?)を実施して日米をけん制した。習近平国家主席の訪米直前には、人民解放軍1160人、ミサイル駆逐艦、輸送機4機、ヘリを動員して欧州、中東とアジアを結ぶ経済の大動脈であるマラッカ海峡でマレーシアと初の共同軍事演習をした。日本の存立を脅かす可能性があるのは、中東のホルムズ海峡もさることながら、インド洋から南シナ海に抜ける日本に直近のマラッカ海峡だ。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との軍事演習としては最大規模である。マレーシアは南シナ海で中国と領有権争いをしているが、表だった対立を避けている。人口の4分の1を中国系が占める対中穏健派の同国を取り込んでASEAN の分断を図るのが中国の狙いだろう。
安保関連法に対しては南シナ海で中国と係争中の台湾、フィリピンが歓迎声明を出した。ベトナムは9月15日、最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長が安倍晋三首相との会談で日本支持を表明した。米国の同盟国であるオーストラリアは首相が突然交代したが、ターンブル新首相は安倍首相との電話会談で「地域的、国際的な平和と安全保障における日本の役割を増大させる法改革を完全に支持する」ことを確認した。国連総会の機会に日米印3カ国の外相会議が初めて開催される。太平洋、インド洋にまたがる民主主義大国の結束を固めて中国をけん制するものだ。日本はアジアで唯一の民主主義先進国(G7)の一員として、世界で果たすことができる政治的役割は大きい。アジアから中東、アフリカに至る世界の安定と平和の維持に能動的に動き出す時が来た。それが安保関連法を成立させた「積極的平和主義」を掲げる安倍内閣の新たな責任である。
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