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2015-09-24 00:00
(連載1)イランとアメリカのデタントは考えにくい
河村 洋
外交評論家
オバマ政権による核合意がイランとアメリカのデタントへの道を開くと期待する向きがある。しかし本欄で何度か指摘しているように、それは考えにくい。核合意自体は議会で超党派の激しい批判ばかりか、中東でのアメリカの同盟諸国の懸念にさらされている。去る9月17日の上院での最終採決では共和党のほとんどの議員と民主党の4名が反対票を投じたが、法案拒否に必要なだけの多数はとれなかった。しかし反対派はまだ諦めていない。イランが合意不履行の際には1996年のイラン制裁法をすみやかに実施するように呼び掛けるとともに、当面の方策として湾岸アラブ諸国とイスラエルの対イラン抑止力強化への積極的な支援を呼びかけている。また査察自体も時間がかかるものである。反対派はイランに対して厳しい合意の厳しい遵守を求めてゆく方針である。イラク戦争はサダム・フセインの不審な行動が引き金となったことを忘れてはならない。さらに共和党は一般には公開されていないオバマ政権による裏取引についての訴訟さえほのめかしている
さらに核合意賛成派も米・イラン関係に関して楽観的でないことは、ヒラリー・クリントン前国務長官が2009年のグリーン運動への支援を控えたバラク・オバマ大統領を非難していることに表れている。オバマ氏はイランとの外交関係の突破口を開こうとしているのかも知れないが、大統領の任期は1年あまりしか残っていない。クリントン氏の発言は、次の選挙で勝つのが民主党であろうが共和党であろうが、オバマ政権後にはイランとアメリカの緊張が高まると言う私の見解を裏付けている。
この合意は本質的に抜け道と欠点だらけである。共和党の大統領予備選候補のマルコ・ルビオ上院議員は、この核合意が問題視されるべき理由を10個挙げている。最も深刻なものはイランとIAEAが交わしてと疑われる裏取引で、それが合意全体を破滅させかねない。またイランが核物質の爆発実験のコンピューター・モデル化を実施できるように、査察も抜け道だらけである。それに加えて遠心分離機を秘密裡に動かすこともできるばかりか、さらに危険なことにイランの政府関係者はこの合意の下では自分達の必要に応じて国連査察官に施設への立ち入りを拒否できるものと解釈している。裏取引と査察の他に、差し迫った問題は制裁解除によってイランがテロリストへの資金援助や兵器の購入ができるようになることである。そうした可能性がある兵器の中でもアメリカの論客たちがきわめて危険視しているのが、イランのICBM開発によってアメリカ本土への攻撃が現実化することである。
そうした欠陥のため、ディック・チェイニー前副大統領は「この合意は敵によるアメリカ本土への直接攻撃を許すような歴史的にも独特なものだ」と辛辣に論評している。制裁解除となれば、ロシアと中国がイランに武器を輸出するであろう。今年の7月に行なわれたウィーン交渉の前に、ロシアはイランへのS300対空ミサイルの売却を表明してイスラエルの不興をかったが、オバマ氏はそれを了承している。このミサイルは中国がコピーしたHQ9とほぼ同型で、中国がこれをトルコと韓国に輸出しようとした際にはNATOと日本の安全保障の専門家達の間で物議を醸した。ロシアの行動は中東の安全保障に多大な悪影響をもたらすもので、イスラエルがオバマ政権のイラン政策を疑問視するのも当然である。ロシアと中国はこれまで以上にイランに兵器を売るのだろうか?私は両国によるイランへのキャリアー・キラー・ミサイルの輸出を警戒しているが、それと符合するかのように中国は抗日戦勝70周年記念日にDF21Dを誇示した。イラン核合意はペルシア湾でのアメリカ海軍の海洋支配を脅かしかねない。(つづく)
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