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2015-10-08 00:00
岸田、石破の“出る杭”が打たれた
杉浦 正章
政治評論家
今回の内閣改造における最大の着目点は、改造ではなく改造しない部分だ。明らかに首相・安倍晋三は後継を狙う外相・岸田文男と地方創生相・石破茂の二本の“出る杭”を打った。2人とも水没しかねないところまで打ち込まれてしまった。ポスト政権を目指す権力闘争というのはこれほどまでに厳しいものであることが如実に証明された。2閣僚に求められるものは、それでも安倍につくして地歩を築いて行けるかどうかであるが、当分金縛りにあったように党内的に身動き出来ない状況が続くだろう。まず岸田は、読売によると改造前に官房長官・菅義偉に泣きついたという。「どれだけ政権を支えているか分かってほしい。自分以外に入閣がなければメンツがたたない」と求めたのだそうだ。そもそも派閥の長なら、菅よりも安倍に“直訴”すべきところだと思うが、岸田には安倍がよほど怖く見える存在になってしまっているのだろう。しかしこれが失敗だった。ふたを開けると、岸田派の入閣は改造前の5人から、1人にとどまってしまったのだ。派内に怨嗟の声が広がり、岸田の政治力の無さを嘆く声まで出始めた。そもそも先の自民党総裁選では反安倍ノーバッジで岸田派の古賀誠が前総務会長・野田聖子の擁立に動き、岸田が懸命に派内に対する巻き返し工作を展開して、古賀の“魔手”から逃れた経緯がある。
それにもかかわらず入閣1人では泣くに泣けまい。安倍にしてみればどっちみち再選は確実であり、たいした“功績”には映らなかったのだろう。悔しかったら岸田も禅譲ばかり狙わずに、一強安倍に対立して戦い取るくらいの意気込みがなければならないことが、しみじみと分かったはずだ。もう1人の石破も“戦意喪失”の様相だ。9月28日に自身を会長とする石破派「水月会」を立ち上げた。普通ならさあ戦(いくさ)だと反旗を翻して入閣を辞退し、中原に鹿を追って駒を進めるのが常だ。ところが石破は地方創生相などという、何をやっているか分からないポジションにしがみついた。しがみついたのを見て安倍は第二の矢を放って、石破をますますかすませる手を打った。新内閣の目玉である1億総活躍担当相を新設、腹心中の腹心の官房副長官・加藤勝信を据えてしまったのだ。誰が見ても一億総活躍は地方創生相の担当すべきテーマであり、石破が留任を目指したのは、これが回ってくると考えたからに違いない。ところが石破の思惑は見事に外れ、トンビにあぶらげをさらわれて、仕事がなくなった伴食大臣に留任せざるを得なくなったのだ。これでは入閣せずに万一の政変で安倍が倒れるケースを狙って力を養った方が明らかに得策であった。
石破の場合はかつて幹事長を降ろされたときに、地方行脚で地方党員の支持を取り付け、これが前回の総裁選でいったん1位になる原動力となったのだが、内閣にとどまった結果ますます力は削がれる形となったのである。こうして岸田と石破の出る杭が打たれたのであるが、安倍にしてみれば、佐藤栄作が福田赳夫と田中角栄を叩いたり、使ったりでバランスを取って長期政権を維持したように、主導権を握ったことになる。総じて第3次内閣は安保政策ではないが「専守防衛安定型」の手堅い布陣となった。重要閣僚や党役員は留任させたが、無理に派閥力学で推される新人議員を入閣させればリスクは高まるだけだから、長期政権にはこの手が一番有効であろう。奇をてらえば必ずツケが回るのが閣僚人事だ。過去に女性を多く登用して、辞任続出の“女難”に遭ったことにこりて、3人にしたのも分かる。女性であることだけで能力もないのに入閣させる必要はもともとない。新入閣で筆者が一番驚いたのが、これまで散々原発再稼働に反対し、党内から「共産党」呼ばわりされてきた河野太郎を初入閣させたことだ。国家公安担当の河野が初会見で何を言うかが注目の的だったが、河野は持論を封印して、「安倍首相は原子力への依存度を下げると言っていた」と、従来の政権批判を180度転換させた。まず確実に、安倍または側近から原発再稼働反対を言わないことを条件に入閣を打診され、臆面もなく「閣僚」に飛びついた節操のない姿が浮かび上がる。原発反対で先鋭化していたブログまで閉じてしまった。しかし、サソリの子はサソリだ。身についた「刺す仕事」をいつ再開させるか分からないと見ておいた方がよい。政権は獅子身中の虫を抱えたことになる。
もう1人危ない人事を指摘すれば、環境・原子力担当の丸川珠代だろう。民放アナウンサーあがりとあって、弁舌のセンスはよいが、「女ヤジ将軍」のあだな通り、何を言うか分からないところがある。野党が狙うのは河野の“変節”と丸川の失言であろう。人事の発想が際だったのが、沖縄出身参院議員を初めて沖縄・北方相に任命したことだ。島尻安伊子はかつて知事・翁長雄志とともに普天間基地の辺野古移転を一致して推進していたが、翁長の変節で袂を分かった。翁長にしてみればまずい相手が陳情先の閣僚に起用されたということだろう。人事で県民の共感を呼び、翁長に対してけん制する側面が大きい。この人事を思いついたのは菅だと言われるが、さすがである。野党が臨時国会を開催せよ、とかまびすしいが、たいしたテーマもないのに臨時国会を開催する必要など無い。閣僚が職務になれるのを待って、通常国会を早めに開催すれば十分だ。安倍も外交日程が立て込んでいる。
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