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2015-10-26 00:00
日本共産党提唱「国民連合政府」への疑問
加藤 成一
元弁護士
日本共産党は、今年9月19日成立した集団的自衛権の限定的行使容認を含む「安全保障関連法」の廃止、及びその根拠となった昨年7月1日の閣議決定の取り消し、並びに「破壊」された「立憲主義」を回復するためと称して、民主党など野党各党との「国民連合政府」の樹立を提唱し、国政選挙での「選挙協力」を呼びかけている。そして、同党の志位和夫委員長は、「国民連合政府」では安保条約の破壊や、自衛隊の解消を主張せずに凍結し、他国からの急迫不正の主権侵害などに対しては、安保条約第5条に基づき在日米軍や自衛隊を活用して対処する旨明言している。しかし、同党の唐突な「方針転換」には疑問点が多い。
第一に、「国民連合政府」では、他国からの急迫不正の主権侵害などに対し、在日米軍や自衛隊を活用して対処すると言うが、これは、共産党が在日米軍及び自衛隊の「抑止力」や「対処力」を認めているからではないか。すなわち、有事の場合は日本国憲法第9条に基づく「非武装」では国民を守り切れないことを、共産党自身が暗黙に認めていることにならないか。もしそうであるならば、共産党は「平和外交オンリー」「憲法9条死守」「自衛隊違憲」などのこれまでの非武装論や観念論を唱えるだけでなく、日本国民の大多数が安心できる具体的・現実的・実効的な「安全保障政策」を国民に提示すべきではないか。
第二に、日本共産党が今回提唱した「国民連合政府」と同党がかねてより提唱してきた「民主連合政府」との関係が明確でない。両者はどのような関係にあるのか。そして、将来「民主連合政府」において、他国から急迫不正の主権侵害などがあった場合は、どう対処するのか。その場合は、安保条約が破棄されていなければ在日米軍と自衛隊で国民を守るが、安保条約が破棄されていれば自衛隊だけで国民を守るのか。近年の中国の軍事大国化・海洋進出、北朝鮮の核開発など東アジアの厳しい軍事情勢を考えたとき、20数万人の自衛隊の個別的自衛権だけで日本の領土、領海、領空を守りきることができるのか。1億2700万人の日本国民の生命と平和な暮らしを守り切れるのか。共産党はこの深刻な問題に対し、単に「平和外交で日本を守る」などと安易に逃げることは許されない。これまでの世界の歴史を見ると、安全保障にとって「平和外交」と「抑止力」が車の両輪の関係にあったことは明らかだからである。
第三に、「マルクス主義」(科学的社会主義)の核心は「プロレタリアート独裁」の概念(カール・マルクス著『ゴーダ綱領批判』渡辺寬訳、139頁、昭和37年、河出書房新社刊)であるとされているが、日本共産党は現在もこの概念を信奉し、維持しているのかどうか。また、この概念は、「国民連合政府」や将来の「民主連合政府」、さらには、「社会主義・共産主義の政府」においても維持されるのかどうか。日本共産党は真摯に答えなければならない。国民にとっては今後の国政選挙等の際の重要な判断材料の一つとなるからである。以上の通り、今回の日本共産党の方針針転換に関しては、さまざまな疑問点がある。各界、各方面の識者が、この問題をタブー視することなく、国民のためにその真の狙いや目的等を明らかにする見解を発表してもらいたい。
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