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2015-11-06 00:00
中国とは「浮利を追わず」の心構えで
四方 立夫
エコノミスト
日中経済協会の訪中団が国家発展改革委員会と会談し、環境や省エネ分野を中心に協力関係を強化する方針を確認すると共に、6年ぶりに中国首相と会談し、李首相より投資復活の期待を表明されたとのことであるが、経団連をはじめとした財界首脳には、中国に対する思い入れの強い方が多いものの、現場で中国と対峙している経済人の間では中国に対する警戒感が強い。
2012年の尖閣国有化に端を発した官制デモで鄧小平が自ら松下幸之助に頼んで建設したパナソニックの工場を破壊したことに象徴されるように、もはや日本は中国にとって以前のような必要不可欠な存在ではなく、今回「軟化」の姿勢を示しているのは、中国の経済成長率が鈍化し国内矛盾が顕在化してきたため、やむなく一時的に日本を向いているにすぎず、経済が回復傾向を示せば再び日本に対し強硬な姿勢を示すものと思われる。
日々の貿易においても中国当局からは日本企業に対する通関及び検疫の遅延、面談拒否、などのネガティブな行動が日常化しており、天津爆発事故の直後にも危険物が収納されているはずのないオフィスの中の捜索を実施するなど、経済活動に水を差す行為が散見される。
加えて、最近の円安、中国人労働者の賃金の高騰及び頻発する労働争議などを勘案すると、もはや中国は日本企業にとって有望な投資先ではなく、特に先端技術の移転を伴う事業投資は企業秘密の漏洩を招くのみであり、差し控える必要がある。中国は今後とも市場としては巨大であることから、同国向けの輸出及びそれに伴う物流関連投資は継続するとしても、基本的に日本企業の経営資源はASEAN及びインドをはじめとする新興国に向け同諸国との関係を強化し、貿易及び投資に占める中国の相対的な地位を低下せしめることが、日本の経済発展並びに安全保障に寄与するものである。日本には古くから「士魂商才」、「浮利を追わず」との言葉があるが、今後中国とは目先の利益に囚れることなく、長期的な国益に則った戦略の構築が不可欠である。
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