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2007-02-23 00:00
存続が危ぶまれた国連軍縮局
堂之脇光朗
日本紛争予防センター理事長
国連の潘基文新事務務総長は事務局改組の一環として「軍縮局」を予算、人員はそのままで「軍縮部」に格下げした上で、当初は政務局に編入することを、後には事務総長の直轄下に置くことを提案していたが、2月16日の国連総会での協議の結果、事務総長の直轄下には置かれるが「部」に格下げはしないことになったようである。
事務総長交代にともなう事務局改組は恒例行事のようなものである。1992年にはブトロス・ガリ事務総長が「冷戦終了で軍縮の時代は終わった。これからは平和行動の時代である」として軍縮局担当の明石康事務次長をカンボジア和平のUNTAC代表に任命し、後任を任命しなかったので、軍縮局は「部」に格下げとなり、政務局に編入された。1997年のアナン事務総長就任直後の事務局改組では、私が委員長をつとめていた軍縮諮問委員会が同事務総長の諮問を受けて行った勧告に応える形で、再び「部」から「局」に格上げされ、ダナパラ事務次長が担当となった。これは当時の小型武器や対人地雷問題での進展にともなう軍縮関連の事務量の増大を反映した機構改革であった。
今回は米国をはじめ主要国の思惑とか、激増しつつあるPKO局関係の事務量などに配慮した事務局改組のようであるが、潘事務務総長にしてみれば軍縮局格下げによる数合わせ以外の解決策が見当たらなかったということでもあろう。吉田康彦氏が2月2日付の「百花斉放」で指摘したように、核軍縮を含め軍縮全般を進めるのも後退させるのも主役は国連加盟国であり、国連事務局は裏方にすぎないから、「局の格下げが軍縮を後退させる」と考えるのは本末転倒であろう。2005年5月のNPT運用検討会議では最終文書を採択できず、同年9月の国連設立60周年首脳会議の成果文書からも軍縮関係部分が削除されるような状況では、軍縮局の格下げが提案されたとしても不思議ではない。
しかし、客観的、大局的にみれば米ソ両超大国、東西両陣営間の問題であった軍縮は、冷戦終了後は加盟国全員参加型の国連本来の趣旨に沿った問題となってきている。1991年5月に明石事務次長を長とする国連軍縮局が主催した京都軍縮会議で海部総理(当時)が提唱され、同年秋の国連決議で発足した国連軍備登録制度は武器取引の透明性を高める信頼醸成措置であるが、米国を含む加盟国の努力によりこの15年間成功裏に維持、発展されてきている。国連の枠組みの中での軍縮努力の着実な前進である。90年代後半からの小型武器問題、対人地雷問題の進展も全員参加型の軍縮努力である。9.11事件以後重要性を増している大量破壊兵器不拡散への努力も然りである。大量破壊兵器廃絶も大多数の国連加盟国の大きな関心事項である。このように国連の軍縮関係の事務量は冷戦時代とはくらべものにならないほど増大しているが、これは平和と軍縮を重視する国連の本来のあるべき姿にほかならない。
国連事務次長の数は50名を超え、そのうち30名ほどが事務総長を補佐するシニアー・マネージメント・グループを構成している。このシニアー・マネージメント・グループに入らない事務次長が「軍縮局」の担当となるらしい。地位的にはそれより低い事務次長補が担当となるよりはましであるが、一種の格下げであろう。通常兵器分野だけでなく核軍縮分野でも実質的進展がみられるようになり、軍縮局が本来あるべき姿を取り戻す日が近いことを願いたいものである。
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