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2015-11-23 00:00
武器輸出国とISテロ
赤峰 和彦
自営業
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2014年度報告では、武器輸出国ランキングは、アメリカ、ロシア、中国、ドイツ、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、ウクライナ、イスラエルの順となっています。上位6カ国はドイツを除き国連の常任理事国が占めています。常任理事国自らが紛争やテロの種をばら撒いていることになります。中東情勢が理解しにくいのは、国家同士がイスラム教シーア派とスンニ派で反目しあう上、さらに、各国の国内で細分化された宗派と部族集団が混在し、融合していないことが原因です。加えて、石油の権益をめぐる争いとイスラエル問題がからみあって、事態を一層複雑化させているのです。
全人口180万人の石油産出国カタールは、スンニ派のISに対し、ドイツ、ロシア、フランスから輸入した武器を積極的に提供しています。また、カタールは反イスラエル勢力のハマス(スンニ派)にも援助しています。サウジアラビアもIS支援国です。7月には、ISにつながりがある組織のメンバー431人を逮捕したとの報道がありましたが、事実ではありません。国内対策のための嘘の報道で、今でもISを援助し続けていることに変わりはありません。宗教とは無関係にISを支援している国として中国が挙げられます。ISの支配地域の石油を中国が買っています。大量の石油の買い入れが結果的にISへの資金援助につながっていることは紛れもない事実です。密輸ルートはイラン、イラクの国境付近にあるようです。シリアの現政権は反米親露であることから、アメリカは反政府運動を支援するため、ISなどとも秘かに関係を持っていました。また、かつてソ連に抵抗するために組織されたイスラム原理主義のアルカイダはCIAとサウジアラビアが支援していました。しかし、アルカイダにしろ、ISにしろ今では反米テロを宣言しているのです。このように複雑な利害がからんでいる中では、仮に欧米とロシアが手を組んでIS殲滅を計画しても、次々に新しいテロの芽が出て、ますますテロへの脅威が続くことになります。
このようにISテロは、実際には大国のエゴイズムで作り出されたものです。大国が欲望のために、一国を意のままに操ろうと武器や資金を援助したために、結果的に自国へのテロとなって跳ね返ってきたのです。武器輸出国はその厳然たる事実を真摯に受け止めるべきです。一方、先進国の中で武器輸出を厳格に規制しているのは日本だけです。2014年に武器輸出規制の一部緩和をしましたが、次の3つの条件をつけています。(1)国連安保理決議や国際条約に違反する場合や、紛争当事国へは輸出しない。(2)輸出を認めるのは、「平和貢献や日本の安全保障に資する場合」に限定する。(3)輸出の際には「目的外使用と第三国移転について日本の事前同意を相手国政府に義務付ける。
テロに翻弄されている現在の国際環境下では、テロや紛争の拡大を阻止する段階的な手法としては、日本の定めた3原則に準拠した国際条約をまず各国間で締結することが、最初になすべきことではないかと思います。70年もの間平和を保ってきた日本は、その実績を国際社会に呼びかける資格があると考えています。
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