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2015-12-03 00:00
(連載1)グルジア戦争時の対ロ対応ミスをくりかえす仏大統領
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
パリでの「イスラム国」(IS)によるテロ事件の後、オランド仏大統領が欧米やロシアの首脳と会って、ISとの闘争でロシアも含めた国際連帯を呼びかけた。しかし11月26日のモスクワでのプーチン大統領との会談では、シリアのアサド政権への対応で、欧米とロシアの立場の違いがかえって浮き彫りになった。共同記者会見ではオランド大統領は「将来のシリアにおいてアサドには如何なる役割もない」と彼の退陣要求をはっきり述べた。これは直前に会談したオバマ米大統領とも合意した欧米諸国の一致した立場だ。これに対してプーチンは「それはシリア国民が決めることだ」と述べ、「ISとの闘争で地上軍を出せるのはアサド政権の政府軍以外にない」とアサド擁護論を述べた。オランド、プーチンのそれぞれの問題点を指摘しておきたい。
オランドの欧米と露の宥和と連帯の呼び掛けは、パリでの悲劇的なテロ事件の後だけに、理解できない訳ではない。しかしこれを見て私がすぐ思い出したのは、サルコジ前仏大統領のグルジア戦争(2008年8月)後の行動だ。ロシアが軍事力によってジョージア(グルジア)の南オセチア、アブハジアを事実上ロシアの保護領にしたとき、欧米諸国は口ではそれを厳しく批判した。しかし、サルコジ大統領がロシアとの宥和のために奔走し、欧米とロシアの調停役を果たした。この流れの中で、その翌年米大統領に就任したオバマは、緊張した米露関係のリセット(関係改善)策を打ち出した。これは事実上、南オセチア、アブハジアのロシア保護領化を黙認したことを意味する。すなわち、ロシアによるグルジアの主権侵害を欧米は黙認したのだ。
グルジア戦争の直後、ロシアの独立紙は次のように報じた。「今回のロシア支配層の行動は次のことを世界に示した。つまり、彼らはもはや誰も、何も、恐れていないということである。ーーーグルジアの事件でわれわれは次のことを宣言した。われわれロシア人はまだソ連人である。一般のロシア人は再び次のように教え込まれている。「われわれは敵たちに包囲されている」と。こうしてロシア人はまた、外の世界全体を猜疑心でもって見始めているのだ」(『独立新聞』2008.9.2)。
グルジア事件の時の欧米の宥和的対応が、昨年のロシアによる「クリミア併合」とその後のウクライナ東部の紛争を誘発したことは疑いがない。「クリミア併合」の後、ロシアの軍事専門家は、欧米諸国を嘲笑した。「ロシアの軍事力の前には、NATOもまったく無力だ」と。ちなみに、今年7月、フランスの一部の国会議員団がロシア査証でクリミアを訪問し、サルコジ前大統領はこの行動を全面的に支持した。つまり、日本の鳩山由紀夫元首相と同様、ロシアによる「クリミア併合」を認めた訳である。(つづく)
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