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2015-12-04 00:00
(連載2)グルジア戦争時の対ロ対応ミスをくりかえす仏大統領
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
ラブロフ露外相は、対ISで協力するためには、欧米諸国はロシアと見解が一致しない二義的な問題は捨てるべきだと公然と述べている。二義的問題とは、ウクライナ問題であり、またアサド政権に対する見解の相違である。私が懸念するのはオランドの行動が、結果的にサルコジと同様、ウクライナ問題、即ち大国による主権侵害を軽視することにならないか、ということである。この問題は、南シナ海や東シナ海での中国の行動にも直接影響することだ。
プーチンは「シリアの指導者の運命はシリア国民が決めることであって、国外から干渉すべきことではない」と述べた。つまり「シリアの現在の正統的政権はアサド政権であり、次の大統領は自由な選挙を行って、シリア国民が自ら決めるべきだ」との論だ。一見、民主主義的な正論である。しかし、興味深いのは、ロシアの識者が、プーチンのこの論を批判していることだ。政府系シンクタンク世界経済国際関係研究所のG・ミルスキーはおよそ次のように述べる。
「ロシアの公式論は狡猾である。アサド政権の正統性は疑わしい。彼が大統領になったのは、国民の支持故ではなく前大統領の息子だったからにすぎず、その前大統領はクーデタで権力を取った。アサド政権が現在支配しているのは、シリアの領土の4分の1に過ぎない。国民の大多数は政府の抑圧政策に反対している。反政府勢力やISとの妥協は簡単には出来ず、政府が大統領選挙を行うとしたら、その支配地域になるが、アサドは必ず立候補し、警察国家的な政権下においては、彼は90%以上の票を獲得するだろう」(『独立新聞』2015.11.16)。
「アラブの春」や旧ソ連諸国の「カラー革命」のように、下からの政治改革や政変を否定するプーチンだが、シリアにおいては「国民の民主的決定」を支持している。また彼は、グルジア政権のように、自国の領土を十全に統治していない政府の正統性もしばしば疑問に付す。しかし、アサド政権の正統性は疑わない。ISに対抗するための国際的な連帯は必要だが、その結果ウクライナやシリアの根本問題を軽視することになれば、それはグルジア戦争の時の様に、将来さらに深刻な事態を引き起こすことになるだろう。(おわり)
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