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2015-12-11 00:00
(連載1)核廃絶をめざす理想主義(急進派)と現実主義(穏健派)の対立
角田 勝彦
団体役員、元大使
国連総会は12月7日、日本が提出した核兵器廃絶決議を22年連続で採択した。問題は「核なき世界」を掲げるオバマ政権になってから昨年まで6年連続で賛成していた米国が、今回は棄権に回ったことである。英仏も、昨年の賛成から棄権に回った。これは新たな展開ではない。4~5月の核拡散防止防止条約(NPT)再検討会議も決裂して、最終文書を採択できなかった。NPT体制は、核不拡散と核軍縮の両面で、成果を挙げられなくなっている。核兵器はダモクレスの剣である。核テロを含む核戦争が人類の終焉を意味しかねないことを忘れてはならない。唯一の被爆国である日本は「核の傘」の下にあるとはいえ、全人類のためにも核廃絶に力を尽くさねばならない。
幸い今年の核兵器廃絶決議は「世界の指導者や若者による被爆地訪問などで、核兵器の実相への認識を広める」とのアピールを盛り込んだ。来年5月には伊勢志摩サミットが開かれ、外相会合は広島で行われる。オバマを筆頭に出来るだけ多くの首脳が被爆地を訪れれば、核廃絶運動にとり2009年4月5日オバマが「核兵器のない平和で安全な世界」を追求する戦略を公表したプラハ演説に匹敵する支援となろう。オバマにとっては2017年1月の退任に向けた「レガシー」(政治的遺産)となろう。内政面で参院選を控える安倍政権にとっても、支持率上昇につながることは間違いない。
核外交でもバランスオブパワーを追求する核保有国には、さまざまな思惑がある。原爆を投下した米国には国内で被爆地訪問に反対する声がある。これを押し切るにはオバマ自身の決断が必要である。それには事務レベルでなく安倍首相自らの働きかけが望まれる。首脳外交の良い機会ではないだろうか。4~5月のNPT再検討会議決裂と12月核廃絶決議への核保有国の棄権(米英仏)ないし反対(ロ中)は、核兵器の「非人道性」を強調して核軍縮を一気に推進しようとするオーストリアなどの急進派と、バランスオブパワーを重視して現実的に核軍縮を推進していこうとする核保有国を含む穏健派の間の対立が、妥協に至らなかったことを意味する。「核の傘」の下にある日本は、急進派と穏健派の間を取り持って双方が賛成できる決議を目指したが成功できなかったわけである。
これは新たな事態ではない。核兵器を持つ国々と持たない国々の対立が深まっているのみならず、事実上の核保有国の拡大とロシアなど一部核保有国の態度硬直化が目立っている。ウクライナ紛争に関連する米欧とロシアの緊張増大から核保有国の核軍縮の停滞も深刻である。これは理念的には現実主義と理想主義の対立でもある。冷戦への後戻りと見る論者もいる現在の国際情勢のなか、核軍縮を核兵器の「非人道性」といういわば「感情的」アプローチで推進しようとするのは「理想主義」と評されよう。(つづく)
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