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2016-01-08 00:00
(連載2)波乱の新年を迎えて未来を考える
角田 勝彦
団体役員、元大使
第一の可能性は、米国の単極である。2001年9月11日の米国における同時多発テロのあと、ブッシュ大統領は、米国が国際テロ組織との戦争状態に入ったとの認識を示し、2001年10月、アフガニスタンとの戦争に踏み切った。次いで2003年、イラクに対し、テロ支援国家として攻撃を行った。いずれも旧政権打倒と新政権の樹立に成功している。弱腰と非難されることが多いオバマ大統領も、2015年10月にはアフガン駐留米軍の撤収を2016年末に完了させる計画を、治安情勢悪化から見直し、17年以降も5500人を残留させると発表している。米国は、今後とも他国に比しての軍事的優位性を保持する意欲と能力を失わないだろう。
第二の可能性は、米中関係の動き次第である。中国は世界第二の経済大国となり、軍備増強に狂奔しているが、現在軍事面で米国に対抗するつもりはない。米国にサイバー攻撃を繰り返すのも産業スパイの意味合いが大きい。さらに米中経済は相互依存関係を深めている。他方、米国は中国のやり過ぎは容認しない旨明らかにしている。たとえば1996年3月台湾で予定されていた選挙を前に中国が台湾海峡でミサイル演習を行ったときには、米国は空母を派遣して、中国を牽制した。また2015年10月27日には 米イージス艦が南シナ海で中国人工島の12カイリ内の航行を実施した。なおロシアの超大国への復活の希望は強いが、ウクライナを巡る西欧とロシアとの対決に関する2015年2月ベラルーシ会談での停戦合意に見られるように、ロシアの地政学的軍事行動には歯止めが掛けられるようである。
第三の可能性は、無極である。当面「イスラム国(IS)」の処理が問題になる。スンニ派過激組織ISが最強のテロ組織と呼ばれるようになった理由は、領土をもったこととIT利用の広報に卓越していることである。しかし2015年11月よりIS壊滅にロシアが本格的に協力し始めたこともあり、多国籍軍による壊滅の目的達成が目に見えてきた。壊滅後、世界各地、とくに中東・アフリカの脆弱国に逃げ込むテロリストを掃討するには、IT面を含めいっそうの国際協力が必要だろう。
第四の可能性は、分極である。機構的にはEUを先駆とする各種経済共同体(例えば2015年末ASEAN経済共同体《AEC》発足)や広域FTA(例えば環太平洋連携協定《TPP》)の進展、政治面では独裁制の崩壊(ソ連・東欧圏、アラブの春、2015年11月ミャンマー総選挙でNLD圧勝)と国家間対立の和解(2015年のみで7月14日 イラン核合意、7月20日米国とキューバが54年ぶりに国交回復、11月7日中国と台湾が分断後初の首脳会談)、社会面では多くの世界的懸案解決のための目的と指標(例えば、2015年のみでも9月国連で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」SDGs採択、12月15日パリCOP21での 世界全体で取り組む2020年以降の地球温暖化対策を定めた「パリ協定」)の採択があった。2015年EUによる百万余のシリア難民の受け入れも進展である。
実は、より重要なのは先端技術開発を中心とする経済面の動きである。ルネサンスの3大発明は火薬と羅針盤と活版印刷術とされる。ニュールネサンスはすでに核と人工衛星とコンピュータを生み、爆発的な技術の進化が、人工知能(AI),ロボット、3D印刷、IoT(モノのインターネット化、第4次産業革命)、ゲノム編集(全遺伝情報編集)、宇宙工学などで起こっている。2045年にはAIの知能が全人類の知性を越える「シンギュラリティ(技術的特異点)」が訪れるとの説もある。2045年は今から1世代、第2次大戦終結から百年で、ひとつの区切りになろう。独米なども革新的技術に対応するための計画を樹立しており、日本政府も「世界は大変革時代を迎えつつある」との基本認識の下に2016年度から5年間で約26兆円を投じる「第5期科学技術基本計画」を策定している。2015年6月の閣議決定「日本再興戦略」も「最高水準のIT社会の実現」を目的の一つにしている。我々の次の世代は、対立する主権国家に縛り付けられることがない、別の世界に生きている可能性があろう。(おわり)
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