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2016-01-13 00:00
米B52の韓国上空飛行の意味
熊谷 直
軍事評論家
北朝鮮の核実験への対応措置としてアメリカは、グァムから発進した戦略爆撃機B52を韓国上空で飛行させたが、その意味について考えてみたい。アメリカがベトナム戦争の時に、沖縄からB52をハノイなどの爆撃に出撃させたことはよく知られている。当時はそのほかに、日本ではあまり報道されなかったものの、冷戦下の対ソ連攻撃予備のため、核兵器を搭載した何機かを常に空中で待機させていた。もしソ連が長距離核ミサイルで米本土を奇襲するようなことがあれば、空中で生き残っている核兵器搭載のB52がソ連の戦略中枢の攻撃に向かうはずであった。核兵器によるこのような攻撃は、退役せずに現在も残っているB52の機能ではなくなっているが、韓国上空からの遠距離対地ミサイル攻撃で北朝鮮の地表の重要施設を攻撃したり、地下深くに設けられている重要施設をバンカーパスターなど特殊爆弾で攻撃する機能は持っている。アメリカは沖縄からグァムに重要拠点を後退させつつあるが、その気になれば北朝鮮王国を破壊しつくすことは簡単だということを、B52が行動で示したといえる。
そのほかに陸地や海中から発射するアメリカの遠距離核ミサイルも常に戦闘態勢に置かれているので、各種の核ミサイルを発射態勢に置いている中国やロシアも、アメリカには手出しをできない。北朝鮮が目いっぱいの努力をしても、アメリカの前では門前払いである。対抗するためには中国やロシアと手を組むほかはない。逆に日本は、アメリカに依存せずには、北朝鮮や中国、ロシアと対抗することはできない。日本近海で海上自衛隊の艦艇が米艦隊と共同で行動しているときに、偶発的に中・露艦隊が米艦隊と衝突したとして、それを手をこまねいて見ていることはできないのが、政治的外交的な日本の立場である。
そのような中で北朝鮮の金王朝が勝手気ままにふるまうことを抑止しようとしているのがアメリカだ。中・露も、金王朝のそのような行動が自国を危険な状況に追い込むことになるのを警戒している。アメリカのB52の行動は、中・露に対して、それぞれの国が危険に巻き込まれることを知らしめるものであり、「自制してくれ」という期待を示すものである。日本の左傾化メディアはすぐに「日本が戦争に巻き込まれる恐れがある」と言いたてるが、「戦争をしたくない」のは中・露も同じである。
金王朝だけは、王様とその取り巻きがすべてを決しているような社会に見えるが、古い体質が永遠に続くわけではあるまい。同じことはアメリカについても言える。民主・人権を旗印にしているが、私から見ると古い体質(たとえば、銃規制問題のように利権で動く問題)が、議会を動かしている。いずれは変質していくのではないかと思うが、日本は(現在はアメリカ中心の政策をとらざるを得ないにしても)、いつまでもアメリカにしがみついていると、世界から取り残されることになるのではないか。日本の政治家は、日本国民のための日本人としての施策を頭に置いてほしい。米B52の韓国上空飛行の報を聞いて、その意味を考えた。
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