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2016-02-16 00:00
(連載2)島田晴雄氏のアベノミクス論に同感する
角田 勝彦
団体役員、元大使
株価下落は日本だけの問題ではない。中国(日本と同じ2割以上減)を含みグローバルな株安連鎖が続き、世界の株式時価総額が急減している。直近での推計は約56兆ドル(約6400兆円)となり、過去最大だった2015年5月末に比べて14兆ドル(1600兆円)減少した。世界的な景気減速懸念でリスク資産である株式を手放す動きが広がり、株安が実体経済を下押しする懸念も出始めた。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、2月下旬に中国で、金融市場の安定化策を協議するが、中国経済や原油価格下落に対する懸念が強いうえ、新興国の資本流出への対応には困難があり、どの程度のてこ入れとなるか疑問である。
実際、実体経済にも影響が出ている。内閣府が2月15日発表した2015年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0.4%減、年率換算で1.4%減となり、2四半期ぶりのマイナスとなった。個人消費が大きく落ち込み、住宅投資、輸出も減少した。暖冬で冬物衣料や暖房器具などの売れ行きが鈍ったうえ、物価の上昇に比べて賃金が思ったほど伸びず、消費者の節約志向が続いたためである(厚生労働省が2月8日発表した毎月勤労統計調査(速報)では、物価の影響を考慮した2015年の実質賃金は前年比0・9%減で、4年連続のマイナスとなっている)。輸出についても円高が続けば、自動車や電機といった産業に影響が広がる可能性がある。
だが実は、株式市場と実体経済の間にはかなり乖離がある。身近な日本の例でも、過剰流動性から株価が上昇しても、次に企業の安心感が生まれ設備投資を行う流れは見られなかった。逆に2月15日にはGDPのマイナス発表にかかわらず下げ過ぎ感からか株価はかなり反発した。世界でもいわゆる産業資本主義の時代とは市場が変わっている。時価総額で見る世界の企業ランキング(2016年1月)は上からアップル、アルファベット(グーグルなど)、マイクロソフト、エクソン・モービル、バークシャー・ハサウェイ(ウォーレン・バフェット氏の投資持ち株会社)、フェイスブック、ジェネラル・エレクトリック、 ジョンソン&ジョンソン、アマゾン・ドット・コム、ウェルズ・ファーゴ(米金融機関)、ネスレ、ロシュ・ホールディング(スイス医薬品)、チャイナ・モバイル(中国移動体通信)、AT&T、 P&G、JPモルガン・チェース、ウォルマート・ストアーズ、べライゾン・コミュニケーションズ(米大手電気通信事業者)、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギーの酒類メーカー)、トヨタ自動車といった具合で、我々の認識する自動車や電機といった生産業中心の実体経済とは乖離がある。
なお2016年2月1日、グーグルを傘下に持つ「米アルファベット」の時価総額が5700億ドル(約69兆円)程度に上昇し、2011年夏以降、ほぼ一貫してトップを守ってきた米アップル(約5350億ドル)を抜いて、世界首位に躍り出た。4位のエクソンモービルは約3240億ドル、20位のトヨタ自動車は約1890億ドルである。まさに金融資本主義の世界をも越えて、知識が資本に勝る世界(知本主義)が来たのである。経済成長は知識産業が主役となるだろう。新科学技術を基本とする先端産業中心の経済成長を模索することによって、アベノミクスの未来は開けるのではないだろうか。(おわり)
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