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2016-03-04 00:00
(連載2)G20と消費増税
角田 勝彦
団体役員、元大使
そこで今なにが出来るかである。直接的な為替介入で円高を抑えるのには米国を含む国際的反対がある。本命の成長戦略は時間がかかる。1000兆円を超える国の借金を考えると、2016年度予算(一般会計の総額が96兆7218億円で、4年連続で過去最大を更新)の年度内成立が確実になった現在、追加の財政出動を伴う景気対策補正予算実施は容易ではない。なお、株価対策としては、GPIF(公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人)による株式直接売買解禁も検討されたが、現在の相場水準が3月末まで続くと2015年度の運用実績で10兆円近くの損失を生む可能性が出たことから先送りされた。
景気維持による税収拡大を想定すれば、2017年4月の消費税率の10%への引き上げの延期(中止を含む)が現実的景気対策になろう。安倍首相は、そのために動き始めている。これまでは引き上げ先送りの条件を「リーマン・ショックや大震災のような事態」としていたが、2月19日の衆院予算委では「世界経済の収縮が実際に起きているかの分析も踏まえ、政治判断で決める」との発言を行った。政府は、2月25日、2月の月例経済報告を発表し、世界の景気について「弱さがみられる」と指摘し、昨年8月以来、半年ぶりに判断を下方修正した。さらに3月1日、安倍首相は、5月下旬のG7伊勢志摩サミットで日本が主導して世界経済の安定化策を話し合い政策協調を探るため、内外の有識者から話を聞く国際金融経済分析会合を立ち上げる旨発表したが、これもお墨付き獲得が目的と考えられる。
安倍首相は、悲願の憲法改正に向け、参院選で改憲勢力による「3分の2」確保を目指している。発信も強めている。3月1日の衆院予算委員会でも、「『3分の2』が可能となったもの(項目)から憲法改正に取り組んでいきたい」と述べた。自公に加え、改憲に積極的なおおさか維新の会、日本のこころを大切にする党の4党で78議席を得れば、参院で改憲勢力が3分の2に達する。可能な数字であるが、「安倍1強」へのバランス感覚から世論が野党に流れる可能性も指摘される。民維新党を中心に共産党を含む野党の共闘も考えられる。
これに対抗し衆参同日選による与党議席の底上げが検討されているのは確実だろう。ただし衆院議席が減少し、虻蜂取らずになっては元も子もない。そこで京都3区の補欠選挙は自民の不戦敗としても4月24日に投開票される衆院北海道5区の補欠選挙の結果が重要となっている。またいずれにせよ国民の関心は経済社会問題中心である。アベノミクス」の評価はこれまでで最も低くなった。追加の財政出動を伴う景気対策や2017年4月の消費増税の中止を求める声が多い(2月28日日経世論調査「消費増税反対」58%)。消費増税の延期乃至中止を打ち出した方が支持率のかさあげを得ることは明らかだろう。(おわり)
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