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2016-03-10 00:00
(連載1)ロシアの一方的主張に日本はその都度反論せよ
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
G7の伊勢志摩サミットが5月26~27日に開催される。それに先立ち5月初めの連休時に安倍首相が欧州とロシア(ソチ)を訪問して、欧州首脳やプーチン大統領と会談する準備が進んでいる。このような時、ラブロフ露外相が多数の外国人記者を招いた記者会見で、日露の平和条約交渉に関して従来の日ソ・日露交渉を全否定するような強硬な論を詳細に展開した。安倍首相は米国などの反対や懸念を押し切ってでも訪露して首脳会談を実行しようとしている。その最大の理由は、平和条約問題解決のためだと首相は公言してきた。もし首脳会談を実行するのであれば、国際社会の理解を得るためにも、首脳会談の前に日本政府が是非ともすべきことがある。それは、この問題に関する日本側の見解を、すなわちラブロフ外相などロシア側見解の間違いを明確に指摘する見解を、国内外に発信することである。これまでは、ロシア政府の平和条約問題に関する過去の交渉を無視した日本批判に対し、日本政府の発言は余りにも「気配り」に終始している。このままでは、国際社会は日本の立場を理解できない。また、首脳会談における安倍首相の立場も、始めから守勢に回ることになる。
近年ロシア政府は、過去の日露間の北方領土交渉の経緯を全否定する、暴論としか言えない対日強硬声明を国際社会に向けて展開している。その要旨は、第2次世界大戦後の領土問題はすでに決着済みであり、「日露の平和条約交渉は領土問題とは無関係」というものだ。ロシア側は、最初にプーチン大統領が「南クリル(北方4島)がロシア領であるのは第2次大戦の結果であり、国際法的にも認められている」と述べ(2005年9月)、「日ソ共同宣言に基づく歯舞、色丹の《引き渡し》は《返還》ではない」との強硬論も述べた(2012年3月、2014年5月)。昨年はモルグロフ外務次官が「日本とは領土問題でいかなる交渉も行っていない」と、事実をまったく無視する発言をした。そしてこの1月26日にはラブロフ外相が、ロシア人記者200名、外国人記者250名以上を招き、日露の平和条約に関して国連憲章や日ソ共同宣言などに言及しながら、相当立ち入った形で、やはり事実に反する強硬論を縷々述べた。
最近ロシア側指導者が一貫して述べているのは、日本が「戦後国際的に確定した現実を認めていない」、つまり「歴史を修正しようとしている」ということだ。このラブロフ外相の記者会見だが、ウクライナ問題やシリア問題などが国際社会の焦眉の課題になっているとき、外相はその当事国であるロシア政府を代表して、わざわざ日露の平和条約問題に関しかなり詳細な国際発信をした。ここには、平和条約問題に関するロシア側の論理を世界に浸透させようという強い意志が読み取れる。
私が最も懸念していることは、ロシア側の積極的な国際発信に対して日本側が、ロシアの論理がいかに間違っているかについて、日本国民や国際世論に理解できるように発信していないことだ。モルグロフ発言に関して日本政府は、「非建設的で事実にも両国首脳の合意にも反する」と反論しただけだ。これで、ロシア側の論がなぜ事実や合意に反するのか、なぜ間違っているのか、理解できる者がいるだろうか。ラブロフ外相の暴論に対しても、日本政府は翌日「平和条約交渉の中核が北方4島の帰属問題、すなわち領土問題であるので、我が方としては受け入れることができない」と述べただけで、ロシア側の論がなぜ間違っているかについては全く説明していない。さらに「抗議などの特段のアクションは考えていない」とさえ述べている。領土交渉など微妙な交渉内容は非公開というのは当然だ。しかし、自国の立場を示す基本的論理は、日本政府は事実を歪曲せずに積極的に国内外に発信すべきだ。(つづく)
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