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2016-03-11 00:00
(連載2)ロシアの一方的主張に日本はその都度反論せよ
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
2月19日には相木俊宏・日本外務省欧州局参事官がインタビューで、平和条約問題に関して、「我々は、両国指導者の指示に基づき、4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するため、両国に受け入れ可能な解決法を見出すために交渉を加速する必要がある」と、きわめて穏当な発言をした。このインタビュー記事に関してロシア外務省は翌20日に直ちに声明を発し、例によって「第2次大戦の結果」論を繰り返した後、「日本側が両国の微妙な問題に関してマスコミで述べた」ことに遺憾の意を表した。これは、まさにラブロフ外相発言に対して日本政府が述べることではないのか。ロシア側のこの「タフな神経」には「脱帽」と言う他はない。
同じ2月20日にはロシアのノーボスチ通信が、このロシア外務省声明をそのままなぞって、相木参事官の発言を批判する報道をした。私が注目したのは、ノーボスチのこの批判に対して、そのすぐ後に、読者による評価スコアが、プラス328、マイナス8と出ていたことだ。ロシア側の論理の一方的な浸透が、数字でもはっきりと示されている。懸念されるのは、日露の応酬がこのような形で進むならば、慰安婦問題や南京大虐殺問題と同様、事実を無視した相手側の論理が一方的に世界に拡散し浸透してしまうことだ。ちなみに筆者はモスクワのカーネギー・センターのサイトなどを通じて、平和条約問題に関する私見やロシア専門家との詳細な議論を、ロシア語、英語などで国際発信している。ロシア側の論理が如何に間違っているかに関し、ロシアの専門家に対しても詳しく説いている。また、今私が責任者をしている「日露(日ソ)専門家会議」では、何十年にもわたって、ロシアの専門家と正面から議論を続けてきた。
日露首脳会談に関して強く懸念されることが2つある。一つは、安倍首相はプーチン大統領との会談では「平和条約問題が最重要課題だ」と、これまで各国の首脳にも告げている。しかし、ロシア政府からこの問題に関してこれだけ強硬な「日本批判」を公然と受けながら、日本政府がきちんとした反論を公表しないままで首相が3度も続けて訪露するとなれば、国際的には日本がロシアに屈している弱者と映るだろう。二つは、日本政府が反論を公表しないままで、両首脳が領土問題に関して討議を行うとすれば、本来なら日本がロシアを批判する立場にありながら、安倍首相は完全に守勢に回ってしまう。もちろん理屈の上では首脳会談の場で首相自身が大統領に向かって、ロシア側の論を詳細に論駁することも可能だが、実際にはそれは現実的ではないし、本来これは外務省レベルで行うべきことだ。
昨年11月にプーチン大統領は、「殴り合いが避けられないなら、相手より先に殴らなくてはならないということを、50年も前に私はレニングラードの路上で学んだ」とヴァルダイ会議で述べた。クリミア併合やシリア空爆と同様、日本との平和条約交渉に関しても、ロシアはまさにプーチンのこの一方的な「戦いの論理」を地で行っていると言える。(おわり)
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