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2016-03-16 00:00
朝鮮半島に重大な国際情勢の変化の兆し
赤峰 和彦
自営業
北朝鮮の核実験やミサイル発射に対する国際社会の制裁、米韓軍事演習、北朝鮮の反発などの報道を目にします。そこで、朝鮮半島の本当の現状と望ましい姿を考えてみたいと思います。金正恩氏が北朝鮮の最高指導者に就任して以来、北朝鮮の中国離れが顕著になっています。就任直後から今日に至るまで粛清された幹部の人数は100名以上にものぼりますが、そのほとんどは中国とつながっていた人たちでした。そのことを早くから掌握していた中国政府は、抗日勝利70年式典では北朝鮮代表を冷遇し、さらに昨年12月のモランボン楽団の中国公演の際には楽団の意向を無視したり、粗末な扱いをしました。それから3週間後の本年1月6日、北朝鮮は核実験を行いました。その本当の狙いは中国に対する北朝鮮の意思表示だったと思われます。中国が北朝鮮に対しあいまいな態度をとっているのは、実は中国もまた北朝鮮の核の恫喝に恐怖を感じているからではないでしょうか。
韓国のパククネ政権は発足当初から、中国との政経協調をはかり、韓国経済の対中依存を拡大し、中国のAIIB構想にも積極的に加担しました。アメリカはこのような韓国に対し再三警告を発し、さらに迎撃ミサイル・システムTHAADの配備を強く求めました。そのような中で、中国の覇権主義の実態が国際社会から非難されていることや、中国経済の低迷が韓国経済に悪影響を及ぼしはじめたことで、韓国内には中国に依存する現在の体制への深刻な懸念が広がりました。昨年12月末の日韓首脳会談での慰安婦問題の合意や本年1月に発表された日米ミサイル防衛への韓国の参加やTHAADの配備決定の背景には、「中国との決別」という韓国政府の大きな決断があったと思われます。
このように、北朝鮮、韓国ともすでに昨年の12月の段階で中国に対する姿勢を鮮明にしています。これにより、南北に分断された両国は、いずれも中国に対して共通の意識を持ち始めたのです。したがって、米韓と北朝鮮双方による非難合戦はあくまで表向きのものであって、3月7日から来月末まで行われる米韓軍事演習の仮想敵は北朝鮮ではなく中国であると考えるべきだ、と思われます。実際、米韓軍事演習に対し、中国は「重大な懸念を示す」と述べていますが、さすがに中国も米韓の思惑を見抜いていると思われます。
国際情勢の変化は、しばしば一般常識を超えたところで起こります。敵対していた国家同士が、ある日突如として同盟関係に入るということは、古来決して珍しいことではありません。戦前には、独ソ不可侵条約締結の報に驚いた平沼騏一郎首相が、欧州情勢について「複雑怪奇」の語を残して内閣総辞職に至った事例があります。また、1971年の米中接近は「ニクソン・ショック」と言われるほどの衝撃を国際社会に与えました。日本もその「ショック」を受けて、急遽中国との国交を正常化し、台湾との関係を断絶した経緯があります。したがって、南北朝鮮がともに中国と手を切り始めたことは、重大な国際情勢の変化へと向かう可能性を内蔵していないとは言えません。朝鮮半島が武力行使なしで平和裏に統一されるなら、これ以上のぞましい姿はありません。かつての朝鮮戦争のように、民族内の憎しみが増幅され、虐殺や不幸が繰り返されてはなりません。早い時期に、朝鮮半島の平和的統一が実現することを望みます。
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