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2016-03-22 00:00
安保関連法はアジア安定の基盤
鍋嶋 敬三
評論家
安倍晋三内閣の下で集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法が3月29日施行される。これによって2015年4月、18年ぶりに改定された日米防衛協力の指針(ガイドライン)の実効性が確保される。湾岸戦争から25年、20世紀とは様変わりの21世紀の安全保障環境に対して日本の安全を確保し、アジア太平洋地域の安定に貢献する法的基盤が整った。1960年安保条約改定、96年日米安保共同宣言に続く安保関連法で日米同盟関係は新たな局面を迎えた。日米関係のみならず、アジア太平洋地域の地政学に影響すること大である。
安保関連法の軍事、外交戦略上の意義は少なくとも三つある。第一に最大の焦点は従来の内閣の憲法解釈で認めなかった集団的自衛権の行使を容認したことである。日本に対して「核の傘」を提供する米国の拡大抑止を担保する法的基礎となる。新ガイドラインに明記されたように、日米両国は「アジア太平洋地域を越えた」地域で共同対処や国際貢献を進める安保協力を行う。日本については平時から有事まで「切れ目なく」防衛協力を行い、日米安保条約の対象として尖閣諸島の防衛を明確にし、対中抑止力を高めた。
第二に、安保関連法は対米交渉力の強化につながる。米国は財政危機、政治の機能不全、世論の左右両極分化などで孤立主義的傾向を強めている。大統領予備選挙で共和党のトップを走るトランプ氏の「日本安保ただ乗り論」が幅をきかす危険な状況にある。尖閣諸島のような無人島の防衛に米国が果たして軍事力を行使するかという不安は日本でも根強い。しかし、安保関連法で強力な対米協力体制を固めたことは、このような不安を払拭する法的、政治的支えになる。
第三に、地政学上の意義である。南シナ海で中国の軍事的脅威にさらされているフィリピンやベトナムなどアジア諸国は日本の動向を注視してきた。インドの有識者は安倍首相の安保強化戦略が「アジアのバランス・オブ・パワーの改善に役立つ」として「リスクも伴うが、過去の日本軍国主義より、現在と将来の中国の軍国主義にもがいているアジア諸国に対する保証という恩恵がリスクを補ってあまりある」(ジンダル国際大学のチョーリア教授)と指摘した。
日本政府にとっての今後の課題として(1)新ガイドラインで決まった同盟調整メカニズムによる政策、運用の調整強化、(2)3ヵ国や多国間の安保、防衛協力の推進、(3)防衛力整備の促進および海洋、ミサイル、サイバー防衛の日米協力ーが挙げられる。さらに避けては通れない課題に国民の理解増進がある。安全保障は空気のようなものだ。何事も起こらなければ、空気を吸って生きていることすら意識しない。しかし、空気(酸素)が希薄になれば死に至る。ことが起こってからでは遅い。国家の安全保障は国民の生命、財産を守るためにあるが、それが機能するには国民の理解が不可欠だ。大地震・大津波は一瞬のうちに多くの犠牲者を生む。国家の緊急事態に常に備えを怠らないよう国民の理解を深める努力を傾注することは、内閣、国会を含めた政治の重大な課題である。
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