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2016-04-01 00:00
日米韓が「対北準軍事同盟」の色彩強める
杉浦 正章
政治評論家
今にも北朝鮮が5回目の核実験を断行するという緊迫した状況下において、日米韓3国首脳が3月31日、北朝鮮の核ミサイルに対抗し、これを抑止するために安全保障と防衛協力の推進で一致、事務当局に具体化を指示することを決めた。これは、紛れもなく北朝鮮の核脅威に対する3国準軍事同盟の色彩を濃厚に打ち出したものであり、極東のパワーバランスに決定的な影響を与えることが確実視される。安保法制を実現させた日本は、一朝有事の際は集団的自衛権の限定行使の範囲内で最大限の貢献を求められることになる。この事実上の対北朝鮮3国同盟は、今後極東の安全保障の核となることが予想され、極東で孤立気味の中国の警戒を呼ぶことは必至であろう。
国務次官補・ダニエル・ラッセルが自民党総務会長・二階俊博との会談で3国首脳会談について「北朝鮮の問題についても議論することになっており、非常に重要な話し合いになる」と述べている。言葉使いに慎重な外交官が「非常に重要」と表現したことが気がかりであったが、まさにこれだったのだ。会談後、記者団に首相・安倍晋三は「地域の平和と安定に責任を有する3首脳が一堂に会し、法の支配やルールに基づく行動の重要性を確認し、北朝鮮やグローバルな課題について、率直に意見交換できたことは極めて有意義だった」と強調した。そのうえで、安倍は、「3か国が直面する地域情勢を考えれば、日米韓が協力を緊密にしていく必要がある。特に北朝鮮が核ミサイルの能力を向上させていることは3か国だけでなく国際的な脅威だ。3か国の外務・防衛当局間で具体的な安全保障・防衛協力を推進するため、3首脳が事務当局に指示することとした」と述べた。
つまり安倍とオバマと朴槿恵は、北のいまそこにある「核危機」に対して、場合によっては軍事的な対応をせざるを得ないという情勢認識で一致したのだ。北の攻撃に対しては共同して軍事行動を取る方向を確認したことになる。安全保障の構図としては、日米安保条約と米韓相互防衛条約をブリッジとして3国が協力する構図であろう。これまで3か国は、北の脅威に直面しつつも、慰安婦問題をめぐる日韓対立が足かせとなって、協力体制を確立できなかった。ところが、昨年末の安倍と朴槿恵による「慰安婦合意」は、安全保障面での情勢をがらりと変えた。朴槿恵は中国を刺激するTHAADミサイル配備で米国との交渉に入り、習近平との関係は悪化した。日韓関係は安保面でも秘密情報を共有・保護するための法的な枠組み(GSOMIA)の早期締結に向かって動き出している。これはワシントンにおける朴槿恵の首脳会談の日程を見ても明らかだ。会談は韓米、韓米日、韓日会談の後に習近平との会談を設定しているのである。
オバマはこの潮流の変化を好機ととらえ、日米韓安保協力の枠組みの実現へと動いたのだ。朝鮮戦争当時は日本の軍事協力は不可能であったが、「第2次朝鮮戦争」が発生すれば日本は軍事的貢献をせざるを得なくなるだろう。折から北は核の小型化を達成するための第5回核実験を行う寸前の状況にある。これにミサイルの大気圏再突入の技術が加われば、米国への核恫喝が現実味を帯びてくる。金正恩は「国家防衛のために実戦配備した核弾頭を任意の瞬間に発射できるよう常に準備せよ」と軍に指示している。心理戦だが、まかり間違えば何をするか分からない独裁者である。北が核兵器を使おうとしただけで、確実に全面核戦争に発展する。安倍が「3か国だけでなく国際的な脅威」と発言したのは当然であり、そのために手をこまねいているわけにはいかない。
一方オバマが、この3か国軍事連携に北への圧力に加えて、対中けん制の意味を持たせていることは否定出来まい。既に日米豪関係では準同盟国的な関係が出来上がっており、南沙諸島問題を抱えるフィリピンやベトナムとも共同歩調を取り、対中包囲網を作りつつある。しかし、肝心の極東では慰安婦問題がネックとなって3か国協力体制が出来なかったのだ。対北関係では、6か国による話し合い解決などは現段階では不可能な状況となっている。中国は米国が北との話し合いに乗り出すよう説得する方向にあるが、まず早期に実現する空気にはない。話し合いを主張するなら、中国は金正恩を説得しなければならないが、北との関係は悪化の一途をたどっておりその可能性も小さい。こうして詰まるところは、軍事力によって北を封じ込めるしか当面手立てがないのだ。史上最大の米韓合同軍事演習の目玉である金正恩暗殺を狙う「斬首作戦」は、北の出方によっては現実味を帯びるものとなる。こうした中での日米韓安保協力の体制確立は、国民の生命財産維持にとって不可欠のものとなる。
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