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2016-04-06 00:00
(連載2)「悪夢の世界」と「核兵器のない世界」
角田 勝彦
団体役員、元大使
世界の核兵器の9割以上を保有する米ソの核軍縮があまり進まず、中国の核ミサイルが増強され、北朝鮮もその開発に血眼になっている現在、「核兵器のない世界」実現はなおほど遠い。他方、国家間の衝突で核兵器が使用される可能性は自殺に等しいとして禁忌となったと見られる反面、テロリストの自殺テロ一般化や原発の全電源停止による爆発の具現化が生じた現在、核テロの可能性には、より警戒度を高める必要がある。
ISの勢力は、3月下旬シリア・アサド政権軍のパルミラ完全制圧、4月3日中部カルヤタイン制圧と減少し、4月中旬にもアサド政権と反体制派の間で和平協議が再開されるようであるが、分散するテロリストの脅威はかえって増大するのである。核兵器そのものの入手でなくても、テロ組織が核物質を盗んで市街地に拡散させれば、深刻な被害を招く「ダーティー・ボム(汚い爆弾)」になる。
3月31日から4月1日までの2日間ワシントンで開催された今回の「核安全保障サミット」は、核・放射性物質を用いたテロに関する情報共有の必要性を強調したうえ、IAEAなどの国際機関を通じて核安全強化に取り組むことなどを柱とした共同声明を採択した。そこでは核物質と核関連施設の安全確保が国家の基本的な責任だと確認し、各国が核テロ防止のため国際機関も含め、連携して情報を共有することでも合意した。オバマ米大統領は議長として記者会見し、「世界の核物質がテロリストの手に渡ることがないよう保護する取り組みにおいて、重要で意味のある進展があった」と述べ、成果を強調した。すなわち、2010年以降4回にわたって開いたサミットにより、日本を含めた30カ国の50以上の施設で「高濃縮ウランとプルトニウムを撤去、または安全を確保した」と述べたうえ、「3・8トン超、核爆弾150発分だ」と具体的な数字を示して成果を説明した(日本からは3月、研究用プルトニウム331キロが米国向けに移送されている)。また、「核兵器のない世界」を目指すと宣言した2009年のプラハ演説にも触れたうえ、ロシアとの戦略核削減合意やイランとの核合意を具体例として挙げながら「実績全般を非常に誇りに思う」と総括した。
今後は普段から核テロ情報を共有するため、30カ国以上の政府高官や専門家による協議会を新たに立ち上げ、定期的に集まるとされる。国際刑事警察機構(ICPO)の核テロ捜査能力の強化を支援し、テロリストに関する情報の共有も進めることなど、5つの国際機関・組織に対して核テロを防ぐための行動計画も示された。4月10~11日に広島で開催される伊勢志摩サミット外相会合では、G7外相がそろって平和記念公園を訪れる予定である。「悪夢の世界」の代わりに「核兵器のない世界」が近づくことを祈りたい。(おわり)
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