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2016-04-10 00:00
河村洋氏のトランプ論について考える
長尾 秀美
小説家(鯖江友朗)
4月6日付けの本欄への投稿で河村洋氏は「もしドナルド・トランプ氏の挑発的な言動がアメリカの外交政策になれば、日本はどうなるのか、どうするべきなのか」という問題を提起された。確かに、河村氏が説くように、有識者による公開書簡をトランプ氏に送り、彼の認識を質すことも一つの方法ですが、ここではとりあえず、現在の日本を取り巻く政治軍事的変数について考慮したいと思います。たとえば、A=トランプ旋風の継続、B=中国の共産党独裁体制(習近平体制)の継続、C=金正恩体制の崩壊、の3つの変数の状況を前提とすると、どうなるでしょうか。
A+Bなら、日本は河村氏の懸念を払しょくできません。なぜなら日米同盟が機能しないという前提になるからです。日米同盟が無効になれば、日本と台湾を含めた東南アジア諸国全体の安全は一大事になります。中国が唱える第二列島線までが、中国の庭になるからです。そうなれば、4月6日付け産経新聞の論評記事『湯浅博の世界読解』に書かれた「対米自立、同盟と矛盾せず」の議論さえ吹っ飛びます。当然ながら対米従属を批判する議論も無意味になります。次にA+B+Cとなれば、事態はさらに由々しいものとなります。3月31日付け産経新聞の論評記事『宮家邦彦氏のWorld Watch』によれば、在韓米軍(国連軍)は動かず、日本は邦人保護に終始するだろうということです。
河村氏の言わんとすることは、「上記のような状況が起こり得るにも拘らず、なぜ日本人は静観しようとしているのか」ということでしょう。ありふれた言葉ですが、現状を的確に説明するのが、日本人の好む「一国平和主義」の考え方です。その源は、1966年3月18日の椎名悦三郎外相による国会答弁に遡ります。社会党の岡良一議員が「日本は原爆の被害を受けたにもかかわらず、核兵器を日本の平和の守り神として神の座に付けている。この矛盾した政策を政府は国民にどう納得させるのか」という趣旨の質問をしたのに対して、椎名外相は「日本の生きる道はおのずから崇高なものがあって、人類の良識に訴えて共存共栄の道を歩むという姿勢でございます」と述べ、核の傘について「たまたま不量見の者があって、危害を加えるという場合にはこれを排撃する、こういうための番犬と言ってもいいかもしれません、番犬様という」云々と付け足しています。
この茶番劇の呪縛を捨て去らない限り、日本は中国だけでなく、アメリカからも見くびられます。もちろんアメリカに対し「日本を見捨てるのか」と言ってみても通用しません。もし何かを言うならば、アメリカだけでなく、中国を除くすべての核保有国に対し「東アジア全体を見捨てるのか」と訴える気概が必要です。ウィンストン・チャーチルには
“There is only one thing worse than fighting with allies—and that is fighting without them.” という言葉があります。この言葉を反芻し、日本人の意識を改革した上で、日米同盟を機能させなければなりません。これこそが人類の良識に訴える唯一の手段です。
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