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2007-03-09 00:00
京都議定書は壮大な迷走か謀略か
小山清二
特許庁先任審判官
現下最大の問題は、1997年の京都議定書の批准により国際公約となった炭酸ガスの削減である。即ち、日本は2008年から2012年までに1990年比で6%の削減を義務付けられた。政府内部における主導権争いで功を焦った嫌いも感じられるが、これから省エネを実施する欧州と異なり、既に省エネを実施し終わった日本にとって、与えられた目標値は厳しいものだった。既に乾き切ったぞうきんを絞る日本と、まだ湿っているぞうきんを絞る余裕のある欧州との違いもあった。
それに、日本は既に6%削減を前に9%もの炭酸ガスが増加しており、全体で見ると、何と15%もの削減を余儀なくされている。当初は我国の技術力をもってすれば目標達成は容易だと言うことであったが、ここに来て技術的にも最早不可能であることが次第に解ってきた。因みに、これは風力発電を推進する欧州も同様であり、欧州は8%の削減のところ、既に12%も増加して20%削減の有り様だ。
既に日本は、産業面では可成りの合理化努力を実施してきており、これ以上の削減は産業構造全体を変えない限り不可能である。むしろ民生部門でのライフ・スタイルの大幅な改善に頼るしかないが、原発反対を言いながら、自らの生活スタイルは変えようとしない国民エゴの前では、全くの空念仏となりつつある。既に欧州の研究者からは、画期的な技術の登場でしか、炭酸ガス排出削減は解決できないとの指摘が出ているようだ。
日本政府は、炭酸ガス削減に関して、条約で決められた炭酸ガスの排出権取引に希望を託して、その権利の購入に向けて、アフリカ、中南米、ロシアなどの発展途上国や対象外諸国との交渉に入りだしたようだ。排出権の売買などは、緊急避難的に事後的に創設した産物に他ならず、炭酸ガス排出の削減と言った全地球的課題にとっては邪道とも言えるものだ。しっかりと炭酸ガス削減に向けて真摯な対応をするべきであろうし、金で辻褄を合わせることは余りにも姑息であり、崇高な地球環境保護を唱った議定書の本来の趣旨にも反する。
今後、膨大な資金で炭酸ガス排出権を購入するようなことは、何れは国家財政にも産業の国際競争力にも負担となって大きく響いてくることであろう。国民のエネルギー・コストにも影響を与えていかざるを得ない。現に米国は、産業の競争力に影響があると言って反対している。目下、炭素税の導入も検討されているようだが、産業界からは国際競争力への懸念から反対が出ている。しかしながら、炭素税は、世界的潮流にもなりつつあるようで、次第に実現に向けて大きく動き出さざるを得ないように思われる。
ところで、現在のところ、万一京都議定書の目的を達成できなかった場合における罰則規定はない。それ故に、日本を始め世界は安閑としている感じもないではないが、仮に達成できなかったら、次のステップにおける炭酸ガス削減の目標値設定に際しては、何と5割増しになっているようだ。そして排出権取引も制限・禁止されるようだ。それに今のところは未定だが、場合によっては、次回は反則金支払いなどの罰則が盛り込まれる可能性も出てくるのではと危惧される。
当方が更に懸念するのは、反則金支払いでも大変な負担になるのは当然だが、それを超えて、達成できなかった暁には、工場や発電所の操業停止、暖冷房の稼働停止、自動車の使用制限等を強制されるのではないかと言うことだ。正に、産業自体の抑制や、国民生活の省エネ強制でもあろう。実に生存自体が大きく制限される可能性も無きにしもあらずである。
実際に、地球規模での異常気象の防止には、最終的には工場などの煙突や配管、家畜や人間自身の口から排出される炭酸ガスの封じ込めが必要になる、とのまことしやかな話さえ囁かれ始めている。これでは、地球環境を破壊しているのは、炭酸ガスよりも、それを排出している産業や家畜、人間自身であり、最終的には生活規模の縮小、人口抑制にまで到達しかねない不気味な将来展望すら感じるものである。
このまま、京都議定書の内容は実現達成できずに、崇高な理念倒れに終わるのか、それとも異常気象の真因を錯誤し、迷走しながら、延々と目標値を積み上げ、はかないゴールを目指して邁進していくのか、或いは、地球環境保護に名を借りた産業解体、人口削減などの壮大な謀略に他ならないのか、次第に何れかの展望・結論が見えてくるのではなかろうか。
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