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2016-04-25 00:00
(連載1)アベノミクス:労働改革
島田 晴雄
千葉商科大学学長
労働改革は、アベノミクスの成長戦略の中でも最重要な改革である。2014年6月に閣議決定された第二次成長戦略では、働き方の改革、解雇の金銭補償、派遣労働法の改正、外国人材の活用が重要な改革項目として掲げられており、閣議決定の前から安倍政権では規制改革会議や産業競争力会議などが中心となって取り組みを進めてきた。しかし、もっとも重要な「働き方の改革」は、労働組合や厚生労働省などの抵抗が激しく、改革は入り口以上には進んでいない。
「働き方の改革」として、安倍政権では、労働時間規制を見直して成果報酬制度を広く導入することを目指した。日本では占領下で定められた労働基準法によって、労働者はすべからく基本的に労働時間に基づいて報酬が支払われることになっている。これは戦後に吹き荒れた「民主化」の「成果」で、職場における身分差別撤廃がねらいだった。戦前の日本では、ホワイトカラー(職員)は年俸ないし月給、ブルーカラー(工員)は日給にもとづく月給であり、現在の欧米諸国の慣行と類似していた。ちなみにアメリカではホワイトカラー・エグゼンプションとして経営者予備軍であるホワイトカラーは労働法の適用除外であり、労働時間でなく成果に基づく年俸が基本とされる。
世界でも珍しいホワイト、ブルー共通の労働規制によって身分差別から解放された作業労働者達の勤労意欲は高まり、戦後しばらくは生産面で大きな効果があった。しかし、現代ではブルーカラーの比率は2割ほどで、大部分は広い意味のサービス業に従事する。サービス労働の価値はベルトコンベヤーの時間ではなく、顧客や注文主の評価なので本質的に成果報酬がふさわしい。実際、製造業の比重の高かった時代は日本の労働生産性は世界でも高い方だったが、サービス経済化の進んだ近年は欧米主要国の中では最低に落ちこんでいる。
安倍首相は、2014年5月に成果報酬を基本とするホワイトカラー・エグゼンプションの導入を指示したが、その後の制度設計の過程で、労働組合や厚生労働省などの強力な抵抗があり、結局、2015年2月に、年収1075万円以上のディーラーやコンサルタントなど特殊な専門職に限定して適用が認められるにとどまり、最大の改革はまだ入り口にさしかかったに過ぎない。(つづく)
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