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2016-05-16 00:00
(連載1)石油安に思う:独占、寡占、利権からの脱却
赤峰 和彦
自営業
原油価格の変動が株式市場を左右するという論調があります。たとえば、4月中旬の主要産油国会合で増産凍結が見送られたことを悲観して、日経平均が16,000円台に下落したとの報道や、4月下旬のカナダの山火事で複数のオイルサンド施設が操業を休止したとの情報で、石油先物とNY株式市場が上昇に転じたとの報道がなされています。多くの評論家やマスコミは、原油安を良くないこととしているように思えますが、この見解は必ずしも正しいとは思えません。日本のようにエネルギーを輸入に頼る国にとって、石油安のメリットは大きいはずです。原油安で困るのは石油元受けくらいで、その他の殆どの業種と消費者にとっては式苦安は歓迎すべきことです。実は、原油安はそれが続くことで困る人たちによって演出されているのです。
原油安の要因は、シェール革命による石油や天然ガス大量供給、中東などの原油産出国の生産調整の失敗、さらには、世界経済の減速の減退など複合的な原因によるものです。要は、需給バランスが崩れたことにあります。原油安の直撃を受けているのはロシア、中東、南米の産油国です。なかでも、ロシアは、プーチン大統領が「原油安は、ロシアを滅ぼそうとする米国とアラブ共同の陰謀だ」と述べているほどです。またこれまで原油価格を一方的に決めていたOPEC(石油輸出国機構)の力が著しく弱まっていることも指摘されています。
今までの国際社会では、産油国や石油メジャーが国際的な石油利権を守ることを優先して、資源を多くの人に安く提供する考えはありませんでした。このため非産油国は高い原油を輸入していました。この考えは今でも変わらず、国際社会は仕方なく彼らの強欲に従っているのです。一方、日本国内においては、石油の元売り業者、大手輸入商社が独占的に石油利権を握っています。過去の政権はそうした利権を当然とし、通産省(経済産業省)は国策として業界を保護してきた経緯がありました。さらに、2014年の「産業競争力強化法」により、経産省は再び石油業界保護に乗り出しています。
したがって、原油安になっても、日本では石油元売り業者が経営努力をしたり、業界に競争原理が働くことは無く、相変わらず独占的な商売を続けようとします。そこで、彼らは意図的に株安を演出して、原油安をその元凶に仕立てています。原油安で困る人とは、石油利権を守り、手放そうとしない企業とその関係者たちです。しかも、彼らは石油エネルギーの代替エネルギーの開発には極めて消極的です。太陽エネルギー、水素電池、メタンハイドレート(石油に比べ燃焼時の二酸化炭素の排出量がおよそ半分)などの自然エネルギーへの転換に抵抗を示しています。これが新エネルギーの開発を止めたり、邪魔している原因になっています。(つづく)
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