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2016-05-19 00:00
(連載1)異端のウルグアイ前大統領とその香気
角田 勝彦
団体役員、元大使
最近、私の外務省時代の最後の任地であるウルグアイが日本で思わぬ注目を集めた。「世界でもっとも貧しい大統領」として有名になったムヒカ前大統領が、4月に出版社の招待で来日し、その動静がマスコミに大きく報じられたのである。報道ぶりは、昨年11月にバスケス現大統領が公式訪日したときよりはるかに大きかった。ムヒカ大統領よりずっと前の時代の在勤だった私にもテレビから声がかかり、特別番組にインタビュー解説で出演したくらいである。
これは「知足(足るを知る)」を説くムヒカ前大統領の発言と質素な暮らしぶりが世界的関心を集めたためで、「文藝春秋」6月号も「強欲資本主義と決別せよ」との特集で「ホセ・ムヒカの警告」という記事を掲載している。しかし、ムヒカの警告については、資本主義よりも、むしろ倫理や人間性の方により向けられていると解釈すべきだろう。
舛添都知事の強弁とか、パナマ文書被掲載者の弁解とか、あまりのうさん臭さにげんなりするニュースのなか、香気ある実践的ロマンティストとしてムヒカ前大統領の真価を見てみたい。ムヒカは「貧乏は、過剰に物を求めることから生じる。私は貧乏なのではなく、質素が好きなだけ」と説く。また「民主主義の下、政治家は、世の中の大半の国民と同じ程度の暮らしを送るべきだ」「大統領たちは、今も君主制を起源とする封建制を受け入れるよう飼い慣らされてしまっている」「大統領閣下と呼ばれ、封建時代の一部特権層のような暮らしをしている」と説く。言うだけでなく、大統領別邸等を整理し、給与の7割を受け取らず、貧困者住宅のために寄付に回し、大統領官邸に住まず、所有する小農場から古いVWで通う等を実践した。
彼は武装ゲリラ活動と長い獄中生活のあと、政治に打ち込んだ。大衆の支持を獲得し、国会議員を経て、大統領という最高の公職に上り詰めたが、終始「質素の実践」を貫き、「ペペ」の愛称と「世界でいちばん貧しい大統領」という敬称を生んだ。ムヒカは資本主義について「市場経済は地球資源を食い尽くす大量生産・大量消費を生んだ。社会に生まれた格差などの問題を解決するには、政治が介入する必要がある。市場に任せきりにせず、政府が富を分配し、公正な社会を目指すべき」旨主張する。(つづく)
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