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2016-05-30 00:00
対中配慮からも北方領土問題の安易な解決に反対する
四方 立夫
エコノミスト
ドナルド・トランプが共和党の大統領候補となることが確実となり、トランプ米大統領誕生の可能性が現実味を帯びてきたことから、我が国は長年に亘り所与としてきた「日米関係は盤石」をもはや大前提とはできなくなり、「自らの国は自らの手で守る」と言う世界史上においてどこの国も当然としてきた大原則に立脚して、日本の総合安全保障を確保しなければならなくなった。
中国の急速な軍備拡張、特に南シナ海における一方的な埋め立て及び軍事化は、日本のみならずすべての周辺諸国並びに米欧等の自由主義陣営諸国にとって、最大の脅威である。かつてはソ連邦として米国と対峙する超大国であったロシアにとっても、かかる中国の台頭は自国の安全保障にとって大きな脅威であり、伝統的な南下政策を遂行する上で中国の海洋進出はこれに真っ向から対抗するものである。
我が国とロシアは戦後70年を経ても未だに平和条約が締結されていない状態であるが、「中国からの脅威」に直面するという点においては、共通の立場に立つものであり、両国間の軍事並びに外交上における協力関係を新たに構築することにより中国を牽制することができる。従来ロシアとの関係はまず「北方領土の解決ありき」で、大きな進展を得ることができなかったが、「中国からの脅威」を考えれば、新な段階に進むことが可能だ。
巷では「2島返還」或は「2島+アルファー返還」での決着もやむなしとの声もあるが、今後の中国との外交関係を考慮すれば、安易な妥協により早計に北方領土問題の解決を図ることは、中国に対し「日本は固有の領土でも放棄する国だ」との誤ったメッセージを発することになりかねない。従って日本は、北方領土に関しては引き続き交渉を継続しながらも、同時に日ロ間における対中安全保障協力関係の調整、構築に注力すべきであり、「4島返還」が実現しないままでの「北方領土問題の解決」は絶対にしてはならない。
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