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2016-05-31 00:00
核軍縮には先ず Balance of Power の回復を
四方 立夫
エコノミスト
オバマ大統領の広島での美しい演説並びに被爆者との対話は多くの一般国民の共感を呼ぶところとなった。2009年のプラハでの「核なき世界」を力強く訴えた演説からの集大成としての広島訪問であったが、現実の世界は同大統領の7年半の任期の間はたしてどうであったろうか。
中国はMIRV(多弾頭)掲載可能なICBMであるDF-41の実戦配備に向けて開発を加速するなど核戦力の強化を着々と進めており、北朝鮮は「水爆開発」並びに「SLBM発射」に成功したと宣言し「核保有国」としての地位を国際社会に認めさせるべく、核とミサイルの開発を急ピッチで進めている。又、ロシアも核弾頭搭載の長距離魚雷「Status-6」の開発をはじめ、一段と核攻撃能力を高めているのが現実である。
中国の南シナ海における一方的な埋め立て及び軍事化、並びにロシアのクリミア併合は、米国主導の自由主義陣営が軍事的対抗措置を取ることがない、との予断に基づくものであり、「独裁陣営」と自由主義陣営のBalanceof Powerは「独裁陣営」に有利に傾きつつある。それにもかかわらず、米国には自ら一方的に核弾頭の削減を実施すべきであるとの議論がある。しかし、米ソの核軍縮交渉は、両者の力が均衡している段階で開始されたものであったことからしても、「独裁陣営」の力が強化されつつある中で米国が削減に踏み切れば、それは自由主義陣営の弱みを示したものと受け止められ、「独裁陣営」を利するだけのものとなろう。
核軍縮は徒にSentimentalismに流されるのではなく、先ず現実の対抗勢力の拡張を抑えるべく、自由主義陣営の抑止力を十分に強化し、Balance of Powerを回復した上で、粛々と長期的視点を持って実行すべきものである。
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