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2016-06-02 00:00
(連載2)安倍首相の北方領土「新アプローチ」とは何か
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
記者会見での今回の質問のポイントは、経済協力と領土問題の切り離しに成功したのか、という点である。質問そのものが、これまでは切り離していなかったし、「切り離し」がロシアに有利という前提に立っていた。それに対して「一方を他方と結びつけない」ということを特に強調して答えている点がプーチン発言の最重要ポイントだ。換言すれば、彼は領土問題の話し合いは行うが、その進展とは無関係に日露間では経済その他の分野での協力を重点的に進めたい、と述べているのである。これは「柔軟姿勢」の正反対である。安倍首相の「新アプローチ」発言の後だけに、このプーチン発言は見逃せないが、朝日報道は「切り離し」という最重要ポイントを完全に無視している。
プーチンは今年4月14日の記者会見で、北方領土、平和条約問題の妥協策に関する質問に対して、「継続的に、絶えることのない対話を行う必要がある」と答えている。つまり対話を延々と続けることを提案しているのである。しかし、日露間の領土問題の解決で残されている唯一のこと、すなわち両国首脳の決断、とくにロシア大統領が領土問題で決断を下すということに関しては、その気配はまったく感じられない。ここで、日露間の「経済その他の分野での協力」と、「領土問題解決」の関係について、基本的な事柄を整理しておきたい。近年ロシアが、前者のみを前面に出して後者の努力をしていないことは周知のことだ。では日本の立場はどうなのか。
5月22日の日経新聞朝刊コラム「安倍氏、ついに『虎穴』へ」で同紙編集委員は「日本はこれまで、まず領土問題を打開し、関係を前進させるという発想だった」と述べているが、これは初歩的な誤りである。たしかにかつて日本政府には「政経不可分」論、すなわち領土問題の解決が経済協力の条件である、との立場も存在した。しかしその後この立場を捨てて、「拡大均衡(1989)」「重層的アプローチ(1996)」といった対露政策が出された。これは、日露両国は、経済その他の分野の協力関係と領土交渉を、共に並行して進展させる、との立場である。日本政府はこれまでこの基本的立場を堅持してきた。
現在の我々の最大の関心事は、安倍首相が提案した「新アプローチ」が、経済協力・国際協力と領土交渉を並行して進展させるというこの基本的立場の変更を意味するのか、という点である。もしそうであるとするならば、経済協力などを熱心に進めた後、その先に、本当に領土問題を解決して平和条約を締結する展望があるのか、という問題である。首脳会談後、5月半ばに訪日して経済協力の話し合いをしたA・ガルシカ極東発展相は、日本側は経済協力と領土問題を事実上初めて切り離した、と述べた。(おわり)
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