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2016-06-05 00:00
(連載1)参院選を前に、成長策を考える
角田 勝彦
団体役員、元大使
伊勢志摩サミットも、オバマの広島訪問も、無事済んだ。安倍首相は、6月1日、消費税増税を2年半再延期すると表明し、7月10日投開票に決定した参院選で「信を問う」と述べた。その前日の5月31日、民進、共産、社民、生活の野党4党は「アベノミクスの失敗」などを理由として安倍内閣に対する不信任決議案を衆院に共同提出したが、本会議で否決された。取り沙汰された衆参同日選がなくなったのには、やはり熊本地震の影響があったのだろう。
参院選の争点として、安倍首相は、6月3日の街頭演説で「アベノミクスを前に進め、経済を成長させるのか(どうかを決める戦いだ)」と強調した。自民党が3日発表した選挙公約もアベノミクスを強化し、「一億総活躍社会」実現のため経済成長の成果を子育てや介護など社会保障分野に分配することなど、経済政策を前面に据えている。首相は、消費税増税再延期については「税率引き上げは経済に負担が掛かる」と強調したが、野党も「延期」又は「撤廃」を主張している以上、これはあまり争点にはならないだろう。
むしろ、野党4党は、3月に施行された安全保障関連法や安倍首相の強権的な政権運営の手法への攻撃を前面に出しており、安倍内閣での憲法改正反対で足並みをそろえている(自民党の公約では、憲法改正は末尾に置き、改憲の合意形成に向けて各党と連携を図る方針を示している)。なお野党4党は、改選定数1の全32選挙区で候補を一本化し、事実上の与野党一騎打ちの構図を作った。
さて参院選では、選挙区73,比例選48の計121議席を巡り与野党が戦うことになる。安倍首相は、当初、非改選を含む全242議席の過半数122議席を目標とした。自公両党は前回の2013年参院選で圧勝して得た非改選の76議席があるため、46議席以上を確保すれば過半数維持は可能になり、改選議席が59であることを勘案すれば、達成は容易と思われた。ところが内閣支持率が好調(5月末の共同通信調査で55.3%。4月は48.3%)であることに影響されたのか、安倍首相は単独参院選決定に際し、「与党で改選過半数(61)」へ目標を引き上げた。これが実現できれば、麻生副首相の「増税再延期なら衆院を解散せよ」との主張にかかわらず、解散無き再延期に踏み切った安倍首相の求心力は維持されよう。「安倍1強」の継続である。なお、首相の悲願である憲法改正に道筋を付けるためには、おおさか維新の会など一部野党を含め3分の2、すなわち自公で改選議席のうち78議席以上が必要との計算もある(与党で3分の2確保には86)。これに近づけば、首相の野心は高揚しよう。(つづく)
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