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2016-06-13 00:00
日本共産党と「プロレタリアート独裁」
加藤 成一
元弁護士
日本共産党は、国政選挙における「民共共闘」などの戦略戦術により安倍政権を打倒し、同党が提唱する「国民連合政府」の樹立を目指している。すなわち、日本の国家権力を奪取して、社会主義・共産主義社会の実現をはかるのが日本共産党の基本的立場であり、このことは綱領にも記載されている。
問題は日本共産党が現在でも「プロレタリアート独裁」の概念を放棄していないことである。「プロレタリアート独裁」とは、「資本主義社会と共産主義との過渡期の国家がプロレタリアート独裁」であり(カール・マルクス著『ゴーダ綱領批判』渡辺寛訳世界思想教養全集第11巻「マルクスの政治思想」139頁昭和37年河出書房新社刊)、「共産主義革命に反対する階級敵や反動勢力による反抗や反革命は、法律によって制限されず、暴力に立脚して打倒する、労働者階級の権力である。」などと規定されている。(レーニン著『国家と革命』邦訳レーニン全集第25巻499頁1957年大月書店刊。スターリン著『レーニン主義の基礎について』邦訳スターリン全集第6巻129頁以下1980年大月書店刊)。旧ソ連など「プロレタリアート独裁」の下では、共産主義革命に反対するものは、資本家であれ労働者であれ、誰であれ、すべて「反革命」「人民の敵」「反動勢力」などとみなされ、銃殺、強制収容所など徹底的に弾圧されてきたのである。このように、「プロレタリアート独裁」の実態は、「共産党独裁」であり、政権交代を認めず、議会制民主主義や市民的自由は否定され、共産党に対する一切の批判が許されないことは言うまでもないであろう。
日本共産党は、「プロレタリアート独裁」は共産党独裁ではないなどと強弁し、これまでも、「プロレタリアート独裁」を「プロレタリアート執権」とか、「労働者階級の権力」などと称して「独裁」の印象を薄めてきた。しかし、「プロレタリアート独裁」の実態が「共産党独裁」であることは、旧ソ連、旧東欧、中国、旧カンボジア、ベトナム、キューバ、北朝鮮など、あらゆる共産主義国家の歴史と現実を見れば明らかであろう。西欧のフランス共産党は、1976年2月の第22回党大会で、「プロレタリアート独裁」の概念を放棄することを決定した。この決定は、イタリアやスペインの共産党の路線と同じ方向性を示すものであった。
しかし、日本共産党は、現在でも「プロレタリアート独裁」の概念を放棄していない。宮本顕治元日本共産党議長は、「プロレタリア独裁を確立することなしには、社会主義的変革と社会主義建設の任務を全面的に遂行することはできない。」と言っている。(宮本顕治著『日本革命の展望』218頁以下1966年日本共産党中央委員会出版部刊)。また、不破哲三前日本共産党議長も「社会主義日本では、労働者階級の権力、すなわち、プロレタリアート独裁が樹立されなければならない。」と言っている(不破哲三著『人民的議会主義』241頁1970年新日本出版社刊)。「プロレタリアート独裁」は、現在の日本共産党綱領では、「社会主義をめざす権力」と規定されており、放棄していないことは明らかであろう。他の野党や国民は、日本共産党が現在でも、その実態は「共産党独裁」である「プロレタリアート独裁」の概念を堅持し放棄していないことを、しっかりと認識しておくべきであろう。
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