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2016-06-20 00:00
(連載1)迷妄の日本核武装論
赤峰 和彦
自営業
先日、新聞の広告欄に、宗教団体が核装備を肯定する書籍広告を大きく掲載していました。人びとの心に平和を説くべき宗教団体が、大量殺戮兵器を肯定していることに、大きな違和感を抱きました。教団や教祖自体に内在する恐怖心を宗教的に解決する力を持ち合わせていないことを物語っているのではないでしょうか。宗教的な教えの代わりに、核による大量殺戮の不安や恐怖心を煽って、教団への求心力を高めようとしているのです。
教団内部だけの話だけであればいざ知らず、そのような教団が国政選挙で同じことを訴えるようになると、注意が必要だと思います。保守の一部にも「日本は核装備をすべきだ」という意見があります。その論拠は「アメリカに依存することなく、中国、ロシア、北朝鮮に対し、抑止力として持つべき」というものです。最近では米大統領候補のトランプ氏の発言への反発などから、こうした声が大きくなっているようです。核兵器が抑止力になるという考え方は「核攻撃を受けないための抑止力」との意味で、「戦争が起きないための抑止力」ということではありません。
今日では、中小国が核を持ち始めるようになりました。中小国は隣国と敵対することが多く、隣り合う国が核武装を始めると、隣国にまで「核ドミノ」が起きます。その結果、隣国同士の紛争がエスカレートすれば、核兵器が使用される危険性が一層高まってきます。実際、北朝鮮と中国の関係に象徴されるように、小国が核兵器を保有すると隣接する核保有の大国を脅かす「弱者の恫喝」として使われます。中国がかつてのように北朝鮮を抑えることができなくなっているのは、このためです。また、核保有国が増えると問題になるのは核の保管で、これがテロリストなどの手に渡ると、国際社会の安定と平和が脅かされます。たとえ、核拡散防止条約(NPT)が核保有大国の利益のためにつくられたものであっても、核兵器をこれ以上保有する国を増やすようなことがあってはなりません。
日本の核保有論者は反米ナショナリズムの人が多いと思われます。そして、未だに大東亜戦争の敗北を精神的に引きずっていて、日本はアメリカの半従属国家であるとの思いがぬぐい切れていないようです。したがって、安倍総理の米国議会演説や戦後70年談話の精神を高く評価していない人が多く、オバマ大統領の広島訪問も歓迎していたとは思えません。これらの人びとは、アメリカに対する精神的なわだかまりを取り除かない限り、いかなる方策をとろうともアメリカからの脱却はできません。脱却する道は、アメリカによって作られた憲法を改正すること以外にはなく、憲法が改正されてはじめて日本の戦後が終ったと言えるのではないでしょうか。(つづく)
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