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2016-06-27 00:00
「ブレグジット」を巡る国民投票から我々が学ぶべきこと
飯島 一孝
ジャーナリスト
EUからの離脱の是非を問う英国の国民投票は、離脱派の勝利に終わり、世界の経済に悪影響を与える結果となった。我が国でも憲法改正の是非をめぐる国民投票がささやかれているときだけに、対岸の火事と思っていたら大やけどを負うことになりかねない。今回のケースから我々が学ぶべき教訓を考えてみたい。
まず第一に、国民投票という手段についてである。通常、一つの問題に絞って国民の意思を問う形式なので、結果がはっきり出てくる。その意味では、国民に分かりやすい形式ではあるが、過去の他国の例をみると、理論よりも感情に走りがちである。じっくり議論して決めることが求められるテーマにはふさわしい手段であるとは言えない。今回の例でも、理性的に考えれば離脱が経済的にマイナスであることは明らかなのに、「エモーションがエコノミーに勝った」という結果に終わった。これを提案したキャメロン英首相もきっと後悔しているに違いない。
第二に、今回の国民投票では、若者対老人という世代間の対立をあおりすぎたきらいがある。実際に20代から30代の若者は大半が離脱に反対し、60代以上の高齢者は多くが賛成票を投じた。こうした図式が独り歩きし、若者対老人の対立を必要以上に強調する結果になったのではないだろうか。離脱賛成派にもそれ相応の理由はあるが、老人が英国の過去の栄光を取り戻そうとして「英国の主権復活」をあおりすぎた罪は免れないだろう。
第三に、諸外国からの移民急増を大げさに考えすぎ、英国民の失業者が明日にでも街にあふれるという危機感を生んだように思う。だが、英国への移民は旧東欧からの移民が多く、英語を勉強して英国に溶け込もうとしているまじめな人々が多いという。いきなり中東の移民が押し寄せるという状況とは違う。むしろ、移民排斥が過度に強まれば、英国内の労働力不足につながることは明らかである。
以上の3点は、日本の状況にも適応できるだろう。まず、国民投票という形式は、長いものには巻かれろというような国民性では、政府の思う通りになってしまい勝ちである。とりわけ日本人は感情に流されやすい傾向が強いだけに、重要問題を決めるのに国民投票という形式はふさわしくないと思う。安倍内閣が推進している憲法改正は国会が改正を議決すれば、最終的には国民投票で決められることになっている。だが、よほど質問の書き方に気を付けるなどの配慮をしないと、国民の意思をミスリードする可能性がある。そのほか、世代間対立や外国人労働者受け入れ問題も色々な要素が混じっているだけに、簡単に国民投票で決めるいうわけにはいかない。論理的な思考をするといわれる英国人でさえも今回のような結果になっただけに、我々は徹底的に議論を重ねて、問題の所在を明らかにする必要があるのではないだろうか。
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