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2016-06-30 00:00
(連載1)英のEU離脱選択と直接民主主義の問題点
角田 勝彦
団体役員、元大使
英国の国民投票でのEU離脱選択は、ご多分に漏れず予想外だった。コモンセンス(良識による判断)が本場の英国で通じなかったのはショックですらあった。統合と拡大を進めてきた欧州が分裂の可能性を示したことは、世界経済、とくに金融・資本市場に大きな衝撃となっている。しかし日米欧主要7カ国の迅速な対応(G7は6月24日「資金供給の用意」 共同声明)などで、波紋もツナミにならず収まりつつある。麻生財務相は、29日「流れとしては短期的に落ち着いている」と述べた。
英国内でも離脱投票を後悔する声が高まり離脱派から選ばれるキャメロンを継ぐ新首相も早急な離脱でなくEUと準加盟的条件改善に努めそうである。政治的にも、スペインの26日の総選挙で急進左派(EU懐疑派)が伸び悩んだことが示すように、英国の離脱採択はむしろ反面教師となっている。EU分裂への連鎖反応は始まっていない。米国も、27日の米英外相会談で、離脱後も、米英が歴史的に培ってきた「特別な関係」の維持を確認している。英国は民主主義陣営の重要な一員であり続けよう。
さて英国国民投票でのEU離脱選択は、世界的なポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭とともに国民投票(すなわち直接民主主義)の危険性にも世の関心を向かわせた。ポピュリズムは、パンとサーカスを求めたローマの民衆に皇帝達が迎合したことが示すように、主義主張の如何を問わず行われる古今東西共通の政治手法である。公職選挙法も、これに対抗するための一規則である。パンとサーカスによって政治家が権力を握ることを可能にさせてはならない。マックス・ウェーバーが説くように、「政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板にじわっじわっと穴をくり抜いていく作業」である。権力も、国民の良識に訴えるような地味な努力によって、獲得させなければならない。
ポピュリズムの問題点とは別の民主主義の問題点がある。「衆愚政治」の危険性である。直接民主主義ではこの危険性が増大する。民主主義の下では「多数」が「正しい」とせざるを得ない。数%の差でもやむを得ない。「民の声は神の声」である。よって国民投票の結果は受け入れざるを得ない。ヒットラーは国民投票を利用してナチスの政策を実現していった。やたらに国民投票を行わないことも一つの知恵である。(つづく)
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