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2016-07-13 00:00
米国の核先制不使用がもたらす日本独自の防衛力強化
四方 立夫
エコノミスト
7月10日付ワシントンポスト紙は、オバマ大統領が自身の政治的遺産として核の先制不使用並びに長期的核戦力近代化予算の削減を検討している、と報じている。中国はNPT加盟国の中で唯一核弾頭を250発から260発に増加している国であり、MIRV(多弾頭)搭載可能なICBMであるDF-41の実戦配備に向けて開発を加速するなど、核戦力の強化を着々と進めている。7月12日の常設仲裁裁判所の判決により更に強硬な行動にでることが懸念される。一方、中国の「黙認」の下、北朝鮮は「水爆開発」並びに「SLBM発射」に成功したと宣言し、「核保有国」としての地位を国際社会に認めさせるべく、核とミサイルの開発を急ピッチで進め、既に10発の核弾頭を保有していると言われている。又、ロシアも核弾頭搭載の長距離魚雷「Status-6」の開発をはじめ一段と核攻撃能力を高めているのが現実である。
かかる状況下、米国により「核先制不使用」が宣言されれば、米国の核の抑止力が著しく低下するばかりでなく、その同盟国として米国の核の傘の下にある我が国の抑止力は著しく低下することになろう。たとえかかる宣言が見送られ、また次期米国大統領にヒラリーが選出されたとしても、米国において脅威となりうる国々における軍拡の中で、自らは一方的に核先制不使用、核近代化予算の削減、核弾頭の大幅削減などが真剣に検討されているという事実そのものは残る。また、トランプやサンダースが多くの国民の支持を受けたことは、米国民が益々内向きになっていることを示すものである。「尖閣諸島が中国に占拠されたとしても、米軍を派遣すべきではない」と過半数の国民が回答したとの世論調査もある。著名な政治学者であるイアンブレマーは近著「Superpower」の中で「米国はIndependent Americaとなり、海外の紛争に関与すべきではない」と結論づけ、多くの国民の共感を呼んでいる。
したがって、我が国として、従来の延長線上で日米安保を捉え続けてゆくことは楽観的過ぎると言わざるをえない。今後とも日米同盟の強化に最善を尽くしながらも、近い将来米国の核抑止力が低下する、あるいは最悪のケースとして日米安保条約の破棄もありうることを前提にして、日本は単独でも自国を守れるだけの防衛力の強化と国民の危機意識を啓発することは、喫緊の課題である。特に日本はサイバーの分野において欧米に比べ立ち遅れていると言われているが、広義のIT業界と自衛隊との垣根を取り払い、政官民一体となったサイバー防衛/攻撃力の強化が最重要課題であり、防衛費の引き上げと共に、サイバー人材の発掘及び育成が早急に求められている。
今回の参院選挙により「改憲勢力」が2/3以上を占めるに至ったが、これを機に広く日本国民に対し、戦後70年間享受してきた平和がいま強く脅かされているとの認識を啓蒙する必要がある。先般の年金機構に対する大規模なサイバー攻撃に見られるとおり、一般国民の生活にも危機は忍び寄っている。「今はもはや平時ではない」との認識を共有し、憲法改正に向けて広く国民の支持を取り付ける時である。英国首相パーマストンの「永遠の敵も永遠の同盟国も存在しない。あるのは国益のみ」との言葉の意味を噛みしめ、「自分の国は自分で守る」との原点に立ち返ることを強調したい。
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