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2016-08-22 00:00
日本の存在感強めるアフリカ開発会議
鍋嶋 敬三
評論家
日本が1993年以来、主導してきた第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ)の首脳級会合が8月27-28日、アフリカのケニアで開かれ、安倍晋三首相はじめ経済界からも多数が参加する。5年毎に日本で開催してきたが、アフリカの著しい経済成長を受けて3年毎に短縮、初めてアフリカでの開催になった。中国の急激な進出に対抗する意味もある。アフリカ54ヵ国は国連加盟国の4分の1強に当たる大票田であり、外務省はTICADを「日本の対アフリカ外交の柱」と位置付けている。日本政府は今会合の目指す方向性として、3年前横浜でのTICADⅤで表明した政府開発援助(ODA)約1.4兆円(140億ドル)を含む官民による最大約3.2兆円(320億ドル)のアフリカ支援パケージの実施を掲げている。新たな課題として、エボラ出血熱の流行にみられる貧弱な保健システムやボコ・ハラムなどの暴力的過激主義の拡大、さらに資源価格の下落への対応がある。
中国のアフリカへの進出は目覚ましい。2000-2013年の間にアフリカだけで943億ドルのODA拠出を約束、習国家主席は2015年末にアフリカ首脳を集めた会合でインフラ整備に600億ドルの支援を表明した。このような大盤振る舞いの目的は何か?長期独裁政権に特別に配慮しているとの国際的批判もある。これについて米国の国際開発シンクタンク「エイドデータ」(AidData)は詳細な調査に基づいた分析から「世間一般の常識とは反対に、中国がODAの配分で独裁主義的あるいは腐敗した政権に特別に配慮したり、資源獲得が目的だという証拠はない」という。中国の援助基準は多くの西側援助国と同じように、被援助国が中国の外交政策をどの程度支持するかであって、統計的に中国のODA供与と国連総会における中国支持の投票の間には強い相関関係があると結論付けている。
アフリカに多くの植民地を抱えていた英国の国会議員でアフリカでの生活経験豊かなダドリッジ前アフリカ担当相が援助と国益の関係についてこんなことを言っている。「海外の貧困と取り組むことは病気、移民、テロリズムや気候変動のような世界的課題の根本原因に対応することに外ならない。これらの問題に対処することがアフリカの利益になり、しっかり英国の国益にもなる」(王立国際問題研究所での基調講演)。つまりは、アフリカ諸国に貿易パートナーをつくり出し、将来の市場を生み出すことにつながるという考え方である。同氏は内戦やボコ・ハラムなどのテロリズムが横行するアフリカにおいては特に「平和なくして繁栄なし、繁栄なくして安全(security)なし」との援助哲学を披露している。
日本主導で13年目を迎えたTICADⅥの優先課題として日本政府はアフリカの経済多角化・産業化、強じんな保健システム、社会の安定化などの分野を挙げている。欧州、米国、中国との援助競争の中で日本の存在感を示す重要分野だ。日本企業による大規模投資案件、経済開発などビジネスに直結する面に目が向けられがちだが、多種の言語、民族からなるアフリカの社会基盤を強くするためにどのような具体的貢献ができるのか。TICADを構成する政府、アフリカ連合、国連、世界銀行などの公的機関と市民をつなぐ国際協力の非政府組織(NGO)の役割がますます期待される。
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