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2016-08-25 00:00
(連載1)核兵器の「先制不使用宣言」について
角田 勝彦
団体役員、元大使
平和の祭典リオ・オリンピックが終わったばかりの8月24日朝、北朝鮮は日本海で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。8月22日から実施されている定例の米韓合同軍事演習への反発らしく、米韓軍が国境を侵犯したら、核ミサイルの先制攻撃を行うと警告している。.抑止力のつもりだろう。米オバマ大統領が検討している核兵器の「先制不使用宣言」に対する米国内及び同盟国の反発は、これでいっそう強まり、宣言は困難になったとみられている。しかし唯一の核被爆国であり、この5月に同大統領の広島訪問を実現させた日本としては、核兵器の先制不使用政策の導入などの米国の核政策見直しを後押しすべきである。核兵器は、防御ができない放射能をまき散らすことからみても「絶対悪」であり、国連の核軍縮作業部会も、核兵器禁止条約の締結交渉を来年中に開始するよう勧告する報告書を、最近、賛成多数で採択している。
「核兵器のない世界」を追求するオバマ政権は、昨年5月に核拡散防止条約(NPT)再検討会議が決裂したほか、1万5000発超の世界の核兵器の軍縮がなかなか進まない現状から、任期終了を前に9月の国連総会出席に合わせて、核戦略の見直し(例えば核兵器の先制不使用宣言や核実験禁止を確約する国連安全保障理事会決議)を表明したい考えだとされる。生物・化学兵器を含む通常兵器による攻撃に対し核兵器で反撃する先制使用の選択肢を保つことは、自国や同盟国への攻撃を敵に思いとどまらせる抑止力となり、「核の先制不使用(いかなる状況でも敵から核攻撃を受けない限り核兵器を使用しないこと)」宣言は、この抑止力を弱めることになるというのが、従来の考え方である。
実は安全保障上の抑止力確保は「核」以前からある問題である。政治的には同盟の締結があり、軍事的には軍備の増強があった。今でも核兵器によらなくても通常兵器の圧倒的な軍事力を見せつけ敵に攻撃を思いとどまらせることは可能である。なお実戦でも核兵器の場合運搬手段と不可分であるから、核ミサイルの探知と破壊により通常兵器のみで敵を制圧することは可能である。
一方放射能をまき散らす危険性から見て核兵器は使えない兵器である。大都市を目的とするいわゆる戦略核兵器は人類の破滅を意味するし、小型とされる戦術核兵器もスリーマイル島、チェルノブイリ、フクシマと続いた原発事故の例を考えると甚大な放射能汚染をまき散らすであろう。その意味では、防御策がとれない「絶対悪」と言える。(つづく)
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