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2016-09-16 00:00
蓮舫が破蓮(やれはす)にならないことを祈る
杉浦 正章
政治評論家
俳句で秋の季語に破蓮がある。蓮池や蓮田一面を覆った大きな葉が晩秋、風などで吹き破られた景は無残である。プロの句にもその無残さを詠んだものと、けなげにも立派な葉を維持しているさまを詠んだ句がある。
敗荷(やれはす)の中の全き一葉かな 清崎敏郎
破蓮となりて水面に立ち上がり 片山由美子
といった具合だ。蓮舫はその名前の由来について「ハスの花は平和の象徴。ハスの花の船をいくつもつないでいけるよう、台湾の祖母が『蓮舫』という名前をくれた」と初めて明らかにした。「舫」は「もやい」であり、船と船をつなぎ合わせることを意味する。将来政治家としての成長を予想したかのような祖母の命名である。蓮舫は自らを「泥沼の中でりんと開く花」と形容したが、たしかにその白一色の装いといい、新鮮さといい、48歳と老いてなお衰えぬ色香といい、今のところはそう自慢されても仕方があるまい。問題は、その泥沼の方の光景だ。民主党政権時代の大失政から依然として立ち上がれず、国民の支持率は、読売の最新調査で安倍政権が62%に達したのに対して、民進党は低迷の8%だ。その民進党がなぜ蓮舫を選んだかといえば、ジャンヌダルクのような救世主であることを求めたからに他ならない。この「泥沼」の状況から抜け出すために、「蜘蛛の糸」でもすがりたいのだ。
だから数々の「難点」にも目をつむった。最大のものが、二重国籍問題である。同問題について前原誠司は「リーダーになる人はうそをついてはいけない。全てを国民に明らかにしなければ、党の顔になった時に、その党は立っていられない。代表の仕事はそれぐらい重い」と手厳しく批判した。新聞は報道しないから皆気づいていないが、小生のように気づいた民進党幹部もいたのだ。蓮舫が二重国籍を発表したのは地方党員などの選挙が完了した13日になってからである。前日台湾代表処 から「台湾籍があった」と連絡を受けたとして、「急きょ」二重国籍を発表したが、地方票に関しては後の祭りであった。それを蓮舫が狙った公算があるから、前原は「うそつくな」と言ったのだ。だから代表選挙の正当性に疑問が生じている。党内に大きなしこりを残したばかりでなく、自民党も臨時国会審議で最大の弱点として突く構えだ。阿部知子も「民主党は新たな船出だが、タイタニックかもしれない」と不吉な予感を述べた。蓮舫自身が持つ危うさがあるからだ。
首相・安倍晋三は臨時国会の党首討論などで、蓮舫とやり合うことになる。安倍は9月15日「党首同士で正々堂々の議論をさせてほしい」と受けて立つ構えだ。「安倍Vs蓮舫」の戦いを予想すれば、安倍が6対4で勝つだろう。安倍と蓮舫は常にハブとマングースの戦いを展開してきた。昨年夏の安保国会では、蓮舫質問の細かさに業を煮やした安倍が、自席から「まあいいじゃん。そんなこと」とやじって、紛糾した。じっさい蓮舫の質問は白いスピッツのようにキャンキャンとうるさいばかりで、重みがない。一見頭をよく見せるためか早口と回転の良さが“売り”だが、国会議員はしゃべればしゃべるほどいいタレント司会者ではない。究極は判断力が最重要なのだ。すぐ見破られるような「うそ」をついてはだめだ。判断が甘いのである。ただ判断が正しい唯一の発言がある。それは民進党前代表・岡田克也を「つまらない男」と形容したことである。今年の流行語大賞に推挙したい。
臨時国会で焦点となる環太平洋経済連携協定(TPP)にしても、そもそも民主党が着手した問題であり、これを米国の対応が分からないからと言って「反対」を言うのはおかしい。奇異に感じたのは極東が危機的な情勢にあるにもかかわらず、民主党代表選挙ではほとんど争点になっていない。蓮舫が主張するのはもっぱら内政ばかりである。これは党首討論では弱みになる。党首討論では、安倍からも質問ができる。安倍は、得意分野でもある外交・安保の論議に引き込み、蓮舫の浅薄さを浮き彫りにするチャンスが到来したことになる。
蓮舫の戦略の基本は「保育園落ちた日本死ね」にある。保育園に落ちても我慢と苦労で歯を食いしばって働く女性が美しいのだが、これが浮動層には受ける。蓮舫路線は、紛れもなきポピュリズム路線であり、今後、子育て介護など女性が活躍できる社会実現を“売り”にして、安倍政権の欠陥をほじくり出そうとするだろう。しかし見誤ってはいけない。人手不足の活況を作ったのは安倍政権であり、民主党政権で子育て問題が発生しなかったのは、女性に職場がなかったからである。もちろん、活況が生んだひずみの是正は安倍政権の責任で処理すべきであるが、派生問題だけを金科玉条のごとく掲げても訴求力は少ない。当初のうちは目新しさと、女性の支持で民進党の支持率は上昇する可能性が高い。しかし、限界がある。近頃の女性は高学歴である上に、自立心と判断力が格段に強くなってきており、本質を見破る。女は怖いのだ。蓮舫が「おんな」を売りにしても長続きはしないのだ。本当に枯れてうなだれる「破蓮」にならないことをみんなで祈ろう。
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