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2016-09-26 00:00
ロシアはソ連時代の一党独裁状態に戻るのか
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアの下院選(9月18日投開票)の開票結果が判明し、プーチン大統領の与党「統一ロシア」が下院450議席の4分の3を占め、単独で憲法を改正出来る権限を取得した。このため、一党独裁のソ連時代を思い起こすような強権的政権が出現しかねない。ロシアの新聞報道によると、下院選の結果、与党は比例区225議席の54%を得票、203議席を獲得した。また、小選挙区225議席では105議席を得た。合わせると、343議席となり、単独で憲法を改正出来る3分の2の議席を越えた。一方、第2党の共産党は92議席から42議席に、第3党の自由民主党も56議席から39議席に、それぞれ減少した。こうした政党も親プーチン派で、いわば「政権内野党」という存在である。いざとなると、プーチン大統領支持に回るのである。
確信的な反プーチン派は唯一人、グドコフ氏しかいなかったが、その人物が落選したため、議席ゼロになってしまった。リベラル派が議席を獲得出来ない最大の理由は、比例区では全体の5%を超す得票率がないと、政党は当選者を出せないという規定があるからだ。こうした政党は小選挙区でも当選者を出せないのは言うまでもない。与党はこうした規定を多用して少数派を締め出しているのだ。プーチン大統領はこの選挙結果について「人々は無条件で安定を選び、指導的勢力を支持した」と、誇らしげに勝利宣言した。2年後の次期大統領選に立候補を目指しているプーチン大統領は、再選への自信を深めたに違いない。次期選挙で再選されれば、それ以前に大統領を2期4年間務めているので、20年間も指導者として君臨することになる。プーチン大統領の強権的政権が一層強まるのではと危惧される。
だが、今回の選挙で一番問題なのは、投票率が48%という下院選の史上最低を記録したことかも知れない。特に首都モスクワで35%に下がったほか、地方の主要都市でも投票率が30-40%にとどまった。この最大の理由は、都市住民の政治不信が極限に達しつつあるからではないだろうか。前回の下院選では、不正選挙の疑惑が強まり、都市住民が抗議の大規模デモを行ったものの、政権側が実力で排除、ウヤムヤに終わった経緯がある。
現在、ロシア経済は原油価格の低下に加え、西側の経済制裁が続き、プーチン政権になって初めて年金の支給額が実質減となっている。これに対し、国民の不満は強く、いつ爆発してもおかしくない状況である。ロシア人は我慢強い半面、忍耐が限界に達すると直接行動を惜しまない民族である。プーチン政権が今回の大勝で気を許していると、いつ国民の反撃を食らうか分からない。
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