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2007-03-26 00:00
ラテン・アメリカの定点観測
大藏雄之助
評論家
世界の変化は激しいから、過去に訪問して一応の知識がある土地にも、私は何年かに一度訪れて現状を確認することにしている。中南米では去年ペルーとボリヴィアを再訪し、近くまたキューバに行くつもりなので、今回はチリ、アルゼンチン、ウルグヮイ(とフォークランド)を回った。たまたまアメリカのブッシュ大統領がウルグヮイの首都モンテヴィデオに入る前日、私はアルゼンチンの首都ブエノスアイレスにいて、ヴェネズエラのチャヴェス大統領が激しい反米演説をするのに遭遇した。
周知の通り、ラテン・アメリカ諸国は全体として反米傾向にある。しかし、私の印象では、その大きな原因はイラク戦争であって、その憎しみの中心がブッシュ大統領である。中南米は地理的にも歴史的にもアメリカ合衆国の影響から離脱できないし、若者にはアメリカ文化は魅力がある。ほとんど英語が通じない社会にあって、南半球の夏休みの終わりのデパートでは BACK TO SCHOOL! というポスターでセールをしていた。
アルゼンチンの世論調査では「ブッシュは嫌いだ」というのが39%だったが、「チャヴェスは嫌いだ」というのも同率の39%だった。町の中に描いてある似顔絵は圧倒的にチェ・ゲバラとフィデル・カストロだった。反米の核は依然としてキューバなのである。
キューバはフィデル・カストロが倒れてから、弟のラウル・カストロ体制への軟着陸に努力しているが、革命後50年以上国を率いてきたフィデルのカリスマには代わり得ない。南米の反米指導者はみなカストロ詣でをして権威を得ている。キューバの窮乏は前々から限界に達している。フィデルの健康は少し持ち直していると伝えられるが、万一のことがあれば、キューバ国民は転機を求め、ハヴァナの政権は崩壊するのではないだろうか。詳しい理由は省略するが、その時にブッシュ大統領が退陣していれば反米勢力は退潮を迎えるであろう。
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