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2016-09-30 00:00
(連載1)東風と西風が吹き乱れる
角田 勝彦
団体役員、元大使
9月16日付鍋嶋敬三氏の寄稿「アメリカがアジアを失う日」を、一警鐘として、面白く拝見した。しかし私は、7月12日のフィリピン・中国仲裁裁判最終判断からG20サミット、ASEAN関連首脳会議と続いた最近の動きを、中国有利の展開とは解していない。中国の考えるように、世界の主導権を目指すこの戦いが「軍事面のみならず法律戦、外交戦、世界世論戦」であるなら、中国は潜在的な経済的・社会的困難もあり、むしろ守りの立場に追い込まれている。これには日本の影響もある。確かに直接の当事者である米国は、オバマが9月3日杭州でエアフォースワンに赤絨毯のないタラップの出迎えを受けたことが象徴するように「中華思想」の洗礼を受けているが、米中による世界の分割(「新型の大国関係」)などは問題外としている。次期大統領は、これを明白に示すだろう。
ところで、9月26日の米国大統領候補第1回討論会で、トランプ氏が冒頭、「米国から新興国へと雇用が逃げ出すのを止める必要がある。中国などが仕事を奪っている」と中国を名指しして批判した事実はあったものの、クリントン、トランプ両候補とも安全保障面での中国の脅威、とくに南シナ海問題に言及しなかったのは不思議である。第2、3回討論に譲ったのだろうか。なお、中国政府は、中国批判を人民元の切り上げや安価な中国製品の米国への大量輸出の是非などほぼ経済分野に限っているトランプ氏より 人権問題や安全保障問題でも厳しい姿勢を示し、中国の海洋進出に対し、オバマ政権以上に積極的に干渉してくる可能性があるクリントン氏を警戒していることに間違いはない。
時代錯誤的な新中華帝国建設を模索している習近平政権の味方は限られてきた。北朝鮮の暴走の牽制のため韓国は中国が反対する「最終段階高高度地域防衛(THAAD)の配備を来年末の予定より前倒しする。日本との和解も進展している。さらに注目すべきは日本の動向である。評価は別にして、安倍政権は日中関係の改善に努めつつ、米国と結んで中国封じ込めに動いている。稲田朋美防衛相は9月15日、ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)で講演し、「米海軍や地域の海軍との共同訓練、沿岸諸国への能力構築支援を通じ、南シナ海への関与を強めていく」と強調し、「広く受け入れられている規範を覆す強制的な試みは誰の利益にもならない」と述べて、中国に自制を要求した。
この動きはアジアにおいてのみ展開されているわけではない。9月第6回アフリカ開発会議(TICAD)での日本の動きは、中国メディアに「中国と一戦を交える構え」と報じられた。ロシアにも働き掛けている。中国からの(領土紛争)「反日統一共同戦線」参加への誘いは断ったようだが、プーチン大統領は、記者会見で7月の仲裁裁判判断を受け入れない中国の立場を支持すると述べた。また中国とロシア両国海軍は9月12日から19日まで、中国広東省沖の南シナ海北部で海上合同軍事演習「海上連合」を開始した。12月のプーチン来日は、北方領土関係で成果を上げられなくても、中国関係で何らかの意思疎通をはかれれば成功であろう。(つづく)
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