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2007-03-29 00:00
改革の継続こそ急務
内田忠男
名古屋外国語大学教授
このところ「円キャリー取引-Carry Trade」というものが、しばしば話題になる。ゼロ金利を脱したとは言え、政策金利はまだ年0.5%という常識を超えた超低金利の続く日本で円資金を借り、それを国際通貨市場で金利や利回りの高い通貨に替えて運用することを指す。円相場が円安に動くか、さして大きな動きがない場合は、労せずして大きな利益を得られる点に目をつけた外国の機関投資家やヘッジファンドが盛んに活用しており、その規模は欧米の金融機関の試算で20兆円とも40兆円とも言われる。
これを「巨額」というか「大した額ではない」とするか、議論の別れるところだが、円資金を利回りの高い通貨に替える過程で、円売り、つまり円の流出を招くから、円安の大きな要因ともなっている。また、何かのきっかけで、これら流出した円資金が一度にどっと還流してきた場合を想定すると、通貨市場に波乱が生ずる可能性も否定できない。日本経済は1960年代のいざなぎ景気を抜いて、戦後最長の景気拡大を続けているが、その背景には、超低金利、円安という、本来であれば「好況」にはそぐわない状況が続いている。平たく言えば、日本経済は半病人のまま成長を維持していることになる。
実態を言えば、超低金利で企業の資金調達コストは極めて低いまま維持される一方で、円安により輸出の条件は格段に有利になっているから、内需は低調なのに企業の収益は史上最高を更新して景気を牽引している、というわけだ。それがここにきて、低金利を外国のファンドに利用され、1985年のプラザ合意前と同レベルとさえ言われる円安が続いている。北米市場の不振から経営危機に直面している自動車の米ビッグ3などは、自分たちの赤字を円安の所為にして、議会や行政府に行動を求めている。
G7などはもう長いこと、成長持続のための政策協調を呼びかけてきたが、今の日本の低金利、円安という状況を見ると、先進諸国の中で日本だけがアウトライヤーになっていると言わざるを得ない。これを打開する道は唯一、改革を継続し、さらに一段と加速しなければいけないのだが、安倍政権になってから改革へのモメンタムが失われ、逆に阻害しようとする官僚や政治家の圧力が強まっている気がしてならない。
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