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2007-03-30 00:00
麻生構想「自由と繁栄の弧」にもの申す
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
3月12日、日本国際フォーラム創立20周年記念夕食会に出席し、「自由と繁栄の弧」と題する麻生外相の記念講演を聞いた。この構想は、今週閣議決定で承認された『外交青書』のセールスポイントにもなっている。要するに、朝鮮半島から北欧5カ国に至るユーラシア大陸の外周の国ぐにとの「対話」と「交流」を強化し、「国造り」に協力することで日本外交の地平を広げるというもので、麻生外交の目玉のようだが、いくつかの疑問を禁じえない。
まず、「弧」という言葉から思い起こすのは、ブッシュ政権がテロとの戦い、大量破壊兵器拡散阻止の重点地帯として打ち出した「不安定の弧」だ。「不安定」を米国が軍事力で「安定」させ、さらに日本が経済力で「自由と繁栄」をもたらそうというのであれば、日米合作の世界支配戦略と受け取られかねない。「不安定」を「自由と繁栄」に置きかえることに日本の役割を見出そうというのは、いかにも安直な発想である。
そもそも、なぜ「弧」にこだわるのか。世界の最先進地域である北欧諸国を含めて「国造り」に協力する意味はない。むしろ日本が教えを請う相手だ。オセアニアまでも「弧」に含めるのは地理的に無理がある。麻生構想にもとづく「弧」を形成する国ぐにをユーラシア大陸に沿って結びつけると、みごとに中ロ包囲網が出来あがる。この両国を刺激して何の得があるのか。
他方、アフリカと中南米がすっぽりと「弧」から抜け落ちているが、日本が今後も国連安保理常任理事国入り実現に努力するからには、総会の票田としていずれも最重要地域だ。しかも「国造り」に協力するという以上、アフリカの安定こそ不可欠ではないか。「自由」と「繁栄」の追求は「弧」にこだわらず、グローバルな規模で行うべきだ。
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