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2016-10-26 00:00
安倍は南スーダンの「呪縛」から離脱せよ
杉浦 正章
政治評論家
加藤茶ではないが、安倍が「ちょっとだけよ」 と言っているように見える。これには「あんたも好きねぇ」と言いたい。南スーダンである。自衛隊に駆けつけ警護など新任務を付与しても、地域と活動範囲がきわめて限定され、誰がどう見ても、何もできない。逆に政府は「何もするな」と、秘密裏に自衛隊に厳命して派遣する可能性がある。要するに、安保法制での「実績作り」だけが狙いとなる可能性があるのだ。おりから保守系のマスコミの世論調査ですら反対が過半数を超え、賛成の倍以上となった。この傾向は総選挙を直撃する。「ちょっとだけよ」 は通用しないのだ。安保法制の具体化なら、誰も評価しない地の果てでの実績作りより、月末から始まる日米合同訓練こそが本筋だ。中国と北朝鮮への抑止力確保こそが、安保法制の真の目的であるはずだ。南スーダンより尖閣なのだ。
首相・安倍晋三は南スーダンの現状について「永田町よりは危険」と述べたが、この言葉がすべてを物語る。それほど危険ではないから、新任務を付与しても隊員に戦後初の「戦死」を出す危険性はない、と言いたいのだろう。これには、「危険ではないのなら、新任務を付与する必然性がどこにあるのか」と言うことになる。一方、いけいけどんどんで、いささか前任の2人と比べると軽い防衛相・稲田朋美は10月25日「自衛隊員が安全を確保しながら、有意義な活動をできる状況にあると思っている」と、やりたくて仕方がないような発言を繰り返している。これには「何を焦っているのか」と言いたい。26日付朝日によれば、防衛省幹部も「国民の理解が深まっていない」と当惑しているという。政府は25日「派遣継続に関する基本的考え方」を発表、「今や一国平和主義ではいられない」と高々と強調したが、G7で南スーダンに軍隊を派遣している国は日本だけだ。派遣していない6か国は一国平和主義か。先進国は泥沼の事態に手をこまねいて傍観しているのだ。「国際社会の平和と我が国の平和は分かちがたい」と強調するが、貢献の仕方は経済、文化、教育などもっと日本らしい方法もあるはずだ。
防衛省の統合幕僚監部総括官・辰己昌良は25日の参院外交防衛委員会で、駆けつけ警護が付与された場合の活動範囲について「限定的な場面で一時的な措置として、能力の範囲内で対応する以上、施設活動を行っている地域に限定されるものと考えられる」と答弁した。これは自衛隊の施設部隊約350人の活動が道路整備などに携わる首都ジュバ周辺に限られるうえに、7月の事例のように市内で大規模な戦闘が生じた場合には能力を超えるから対応できないことを物語っている。そもそも大半が施設科部隊(工兵)であり、無理があるのだ。こうした中で衝撃的な世論調査結果が出た。NNNと読売新聞が最近行った世論調査によると、国連平和維持活動のため来月、南スーダンに派遣される予定の自衛隊部隊に、駆けつけ警護などの新たな任務を加えるべきかについて、半数以上が否定的な考えを示したのだ。
駆けつけ警護などの新たな任務を、「加えるべきだと思わない」が56.9%で、 「加えるべきだと思う」の27.0%の倍以上となった。この結果を朝日や毎日など左寄りの報道機関が出すなら分かるが、右寄りで、新任務付与に賛成している読売の調査であることが驚きである。察するに、国民の多くが南スーダンで安倍がやるかどうか考えている新任務付与に強い疑問を抱いているのだ。これは、いくら政府が「ちょっとだけよ」と言っても、反対論が増加傾向をたどることを物語っている。つまり知れば知るほど“無理筋”の話なのだ。普段はネットの論議などは紹介しないが、ネトウヨも成長してきている。「イギリスやアメリカなど白人の軍隊はとっくに撤兵してアジア人部隊しか警備してない状態。何も日本が歴史的にも全然関係ないのに、白人の後始末をすることは無用」「衝突と称して 軽武装で送り込み、精鋭350名自衛官の命には無頓着 ・・・これが政治家のやることか?」「スーダンって日本とどんな関係があるんだ。そんな場所より尖閣しっかり守れよ」と言った具合の反応が出ている。本来安倍支持であるはずのネトウヨですら変わってきているし、理解は結構深いのだ。
安保関連法を地の果てで国民の支持がないままに活用して、総選挙での票を失うべきではない。日米両国は安全保障関連法で導入された「重要影響事態」を想定した共同訓練を、30日から行うと発表した。安保関連法に基づく訓練を米国と実施するのは、初めてのことであり、後方支援に含まれる救難者の捜索救助訓練などを11月7日から沖縄周辺海域で実施する。政府が日本の平和と安全に重要な影響を与える重要影響事態と認定したと想定したうえでの訓練である。オブザーバーとして英国軍、オーストラリア軍、カナダ軍、韓国軍も参加する。こうした訓練が東・南シナ海への食指を動かしている中国や、漫画・こち亀で拳銃をばんばん空に向かって撃ちまくる警官のようなリーダーを戴く北朝鮮に対する抑止になることは言うまでもない。国民の支持も得られる。悪いことは言わない。安倍は選挙を直撃する南スーダンの「呪縛」から自らを解き放つべきだ。
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