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2016-10-30 00:00
国際オリンピック委員会(IOC)の改組を提案する
松井 啓
元大使、外交評論家
3年前に2020年のオリンピック・パラリンピックの東京開催が決定した際、その選考過程があまりにも長く、かつ透明性に欠けていたので、筆者は本e-論壇に、国際オリンピック委員会(IOC)を改革すべきことを提言した(投稿日/2013年9月21日)。まずそれを再掲し(以後改善された点もあろうが)、今後の方向を示したい。それまでのIOCに対する批判を要約すれば、次の通りであった。
1.IOCは1894年にフランス人により結成された伝統を引継いできて、近年改善されたとはいえ依然として西欧中心の組織であり、会長は欧州出身者が多い(ロゲ会長はベルギー人、引継いだバッハ新会長はドイツ人)。委員111名の構成はヨーロッパ47名、アジア24名、パン・アメリカ20名、アフリカ15名、オセアニア5名である。
2.委員は特権階級の匂いが強く(五輪貴族)、王室・王族関係者、上流階級同士の仲間意識が強くIOC の運営を「牛耳っている」。委員の倫理の乱れ、金権腐敗、横領、収賄、汚職がささやかれている。競技ルールの変更、競技種目の選別・変更も不透明で、開催地の選考過程では委員の現地視察の大名旅行や、贅を尽くした飲食、パーティー、高級サロンでのロビー活動等が絡んで、その必要性があるのか疑問視されている。
3.大会は大規模肥大化(競技種目は300、参加選手は1万人超)、商業主義に毒され(開催費は1984年ロサンゼルスでは1,149億円、2004年アテネ2,656億円、2008年北京2,740億円、2012年ロンドン3,570億円、数字は朝日新聞)、小国や開発途上国での開催は益々困難になってきている。
4.メダル獲得が国威発揚に使われ、選手は専業化して、「参加することに意義がある」、「人種、宗教、政治、性別、その他の理由に基づく国や個人に対する差別は一切認めない」との原点から益々遠ざかっている。
以上であるが、その後も、記録改善のために国家ぐるみの虚偽(ドーピング等)が行われ、結局選手が犠牲となった。また、日本自体についても、エンブレムデザイン、メインスタジアムの設計以下各種競技場建設、開設問題でも種々不透明性が指摘され、小池新都知事になってからようやく各種競技団体を含む国内オリンピック関係組織の体制改善(人的構成、財政、意思決定、責任等)に動き出したことは喜ばしい。これがまず出発点であろう。
日本がIOC改善を進める第一歩は、上記のような委員構成の改組であろう。それには日本がアジア、アフリカ、アラブ、南北アメリカ諸国と協力して、委員会の民主化、透明化、財政のスリム化を提唱し、上記のような問題改善にイニシアチブを取り、その過程で日本に不足していると言われる人脈創り、交渉術の養成ができる。次にIOCは開発途上国のスポーツ(身障者を含む)の発展、選手強化に対する支援を一層進め、日本もJICAや青年協力隊のプログラムで協力する。また、小国や開発途上国でもオリパラピックを開催可能にするための財政的支援を充実させる。更に、政治的理由でオリンピックをボイコットしないことを国際的に決定すること。これこそオリンピック精神に反し、個々の選手の努力を踏みにじるものである。
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