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2016-10-31 00:00
(連載1)プーチン大統領の安倍首相への挑戦状
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
この10月初めにウラジオストクに行き、北方領土問題などについてロシアの専門家たちと率直に議論してきた。何といっても今回のロシア訪問の最も強い印象を受けたのは、平和条約問題すなわち北方領土問題に関する日露間の温度差だった。わが国では、よく知られているように、安倍首相がプーチンとの個人的な関係を基に、平和条約締結に向けて、官邸を挙げて全力投入している。その雰囲気を受けて、日本のメディアでは、12月のプーチン大統領の訪日によって、「2島先行返還で、残りの2島は継続協議」とか、「歯舞、色丹の引き渡し交渉と国後、択捉の帰属交渉の並行協議」その他何らかの形で平和条約交渉が大きく進展する、あるいは平和条約が締結される、といった楽観論が流布している。
しかし、9月に首脳会談が行われたウラジオストクに行ってみると、ロシア側の雰囲気は全く逆で、近い将来北方領土問題が解決するとか、プーチンの訪日で平和条約交渉が実質的に大きく前進する、と考える者は皆無であった。このフォーラムのロシア側主催者ビクトル・ラーリン氏は、プーチン大統領が参加したウラジオストクでの「東方経済フォーラム」にも参加して、安倍首相の平和条約締結に向けた熱っぽい演説を直接聞いている。彼は平和条約問題に関しても親日的とも言える発言をしてきた人物で、最近日本政府から長年の日露交流の貢献に対して感謝状を受け取った。その彼でさえも、「たとえ色丹島、歯舞群島が日本に引き渡されるとしても、100年か200年以上先のことだ」と述べるのである。もちろん「国後島、色丹島の日本への返還は問題外」という意味だ。
私は今年モスクワも訪問して、ロシアの大統領府関係者、国際問題や日本問題の専門家たちと個人的に本音で意見交換をしてきた。しかし、彼らの中で「近い将来プーチンが北方領土を日本に返還する」と考えているものは皆無であった。私はこのような悲観的な見通しが外れることを強く望んでいるが、いずれにせよ、日本側だけが、官邸もメディアも一方的に盛り上がっているのだという事実を、われわれ日本人はしっかり認識しておく必要がある。わが国の楽観論で唖然とさせられることや幾つか気になることを指摘しておきたい。国際的には、国家間の主権問題は、戦争レベルの深刻な問題ととらえられているのに対し、わが国では、いとも軽い問題として扱われている。そのことをまず指摘しておきたい。
私は内閣官房参与の某氏と最近テレビに出演したが、そのとき彼が「ロシアは4島の主権などほぼ100%間違いなく、何時でも日本に引き渡しますよ。主権引き渡しなど、たかが地権書1枚の引き渡しに過ぎない。難しいのはロシアの実効支配をどうするかだ」と述べたのには、驚愕した。かつて首相秘書官を務め、対外政策にも直接関与した現内閣官房参与の言葉とは信じられないほど、主権に関する考えが甘い。他の例を挙げよう。著名なロシア問題専門家が、ある月刊雑誌の最新号(11月号)に、来る安倍・プーチン会談を前にして、次のように述べている。「プーチン大統領にとって、クリミア問題と比べると、北方領土問題はさほど難しい問題ではない。2島どころか4島返還もありうる、というシナリオがいま動き始めたのだ。」(つづく)
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