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2016-11-01 00:00
(連載2)プーチン大統領の安倍首相への挑戦状
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
プーチン訪日に関して、もう一つ気になることがある。それは、安倍首相が山口招待に関して「静かな雰囲気でゆっくり話し合いをしましょう」としているのに対して、プーチン側は東京での会談、あるいは山口と東京での会談を望んだ。それでも安倍首相は簡単にOKを出さなかったが、結局プーチン側に押し切られ、山口と東京で会談となった。プーチン側の表向きの理由は「大型経済ミッションを引き連れて来る」というものだ。ホテルの容量もあるし、経済関係の諸会合は日本経済の中枢の東京で持ちたい、との理由である。安倍首相の「静かな環境でゆっくり」とは、できるだけ二人だけの会合を長く持ちたい、すなわち首脳会談は平和条約問題を中心にしたい、との意味にもなる。これに対してプーチンの関心はあくまでも経済協力なのである。
ここには更に隠れた意味がある。この9月6日のロシア人記者との記者会見で「安倍首相があなたを東京でも伊勢志摩でもなく、山口に招いたことをどう評価されるか?」との質問に、プーチンは「両国の関係に何らかの問題を詮索する必要はない。日本は米国と特別の諸関係を有している。・・・問題は、日本がその行動や対外政策の選択を、大概は同国の主たる戦略的パートナーである米国の見解に沿って行っていることだ」と答えている。
「伊勢志摩」云々は一見素人っぽく見えるが、私はこの記者の質問を非常に鋭いと思った。日本は今年中G7の議長国であり、サミットを終えたばかりの伊勢志摩にプーチンを招くということは、ロシアをG7と同じ扱いにしたこと、つまり日本がロシアの国際的孤立からの脱出路になることを意味する。となると、「東京」も単なる経済会合ゆえではない筈だ。そう、狙いは天皇陛下との会見である。この会見、儀礼的に最高のもてなしを意味するし、国家元首が国賓として公式に訪日した時のもてなしでもあり、制裁対象国には相応しくない。現在ウクライナ問題だけでなくシリア問題でも真っ向からロシアと対立している米国も、不快感を持つだろう。だからこそプーチンは記者に対して「日本は米国に従っている」と、一見場違いの答えを述べているのだ。質問も回答も共に深い裏を読んでいる。
じつは安倍首相が「会談は東京でも行いたい」というロシア側の要求を受け入れる前に、ロシア側は「天皇との会見は必ずしも必要ない」と、わざわざ日本側に伝えている。すなわちロシア側は、安倍首相が「山口でゆっくり」というのは、天皇陛下とプーチンの会見を避けるためだ、と理解している。ちなみに、少し前にサウジアラビアのムハンマド副皇太子(31歳)が来日した時には、サウジではプロトコール上第3位の若い人物だが、事実上最高実力者なので、例外的に天皇陛下が会見した。もちろん安倍首相の意向である。となると、東京での経済会議の強要は「シンゾウ、君は俺をサウジの副皇太子以下に扱えますか」という挑戦状でもある。安倍首相が「時間が少ないので、東京での会談は経済中心の実務会談にしましょう」と言って、天皇陛下とプーチンの会見を避けるとすれば、経済協力に日本はより積極姿勢を示す必要が生まれる。ロシア側に押し切られたと言ったが、天皇陛下との会見があるにせよないにせよ、どう見ても日本側よりロシア側の方が、役者が数段上の感じがする。(おわり)
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